白いビール、黒いビールの「それダメ!」
~白ビール編~
ビール王国 18号から転載
文 : 西林達磨 イラスト : タケウチアツシ
こうばしい黒いビールも、フルーティーな白いビールも大好き。でも、知らず知らずのうちに、「それダメ!」な飲み方をしていないだろうか。ベテランでも勘違いしているかもしれない黒と白の楽しみ方に、ここで一気に白黒つけよう!
白ビール編
Q1. だんだん暖かくなってきたから、白いビールもキンキンに冷やしてグイッと飲もう!
A1. それダメ! 白いビールは、華やかでフルーティーな香りが特徴のビール。キンキンに冷やしてしまうと香りが全く立ってこないので、せっかくの白いビールの楽しみを半分損していることに。自宅であれば冷蔵庫から出して数分置いたくらい(7 〜10度)がちょうどよい。ただ、グラスの形状や厚みによっては、グラスに注いだときに少し温度が上がるため、まずは注いでから香りがよりよく感じられるタイミングを見つけるのもアリ。とは言え、ぬるすぎると白いビールの爽やかさも半減。キンキンではなく、キリッと冷やした白ワインと同じくらいの温度が白いビールにはオススメだ。
Q2. 今日は休みだ! 友達とお気に入りのヴァイツェングラスでカンパーイ!
A2. それ、ストーップ! ドイツのヴァイツェングラスは大ぶりなものが多く見た目にも楽しげだが、グラスの飲み口付近をぶつけてカンパイするのはやめたほうが無難。丈夫そうなグラスでも、勢いよくグラスをぶつければ割れてしまう可能性も。せっかくの休日も台無しに……。そうならないように、大きなグラスでカンパイするときは、なるべくグラスの底を使ってカンパイしよう。厚みのあるグラスの底を軽く合わせて、チンと鳴るくらいが大人のカンパイ。ちなみに、ヴァイツェングラスの形状は泡持ちを良くするために底が細く、香りを楽しむために上部が広がっている。高さがあるので液体が勢いよく流れてくるのも特徴。カンパイした後はフルーティーな香りもゆっくり楽しんで、こぼさないようにゆっくりグラスを傾ければ、休日ビールで最高の気分になれる。
Q3. ベルジャンホワイトといえばムール貝。それ以外は認めないよ。
A3. それ、ファイナルアンサーだとしたらもったいない! 白いビールの中でもベルジャンホワイト(ベルジャンスタイルホワイトエール)は、コリアンダーとオレンジピールを使っていることで、スパイシーさとフルーティーさを兼ね備えた一品。このビールをいわば調味料に見立てることで、いろいろな料理とのペアリングを作ることができるのだ。例えば、コリアンダーの華やかでエキゾチックな風味を活かして、エスニック料理と合わせてみると面白い。エビとセロリを炒めてナンプラーで味付けしたものや、セロリの代わりにそのものずばりパクチー(パクチーの種がコリアンダー)を使ったものなど、ベルジャンホワイトのスパイシーな風味にとてもよく合う。また、オレンジピールのフルーティーなフレーバーは、ハーブやオリーブオイルとも相性が良い。鮭の香草焼きや、オリーブオイルをドレッシングに使ったサラダボウルなどにベルジャンホワイトを添えれば、料理の持つハーバルな味わいがより引き立つ。ムール貝も最強のペアリングの一つだが、他の料理との組み合わせにも野心的にチャレンジしてみては。
Q4.ヴァイツェンっておいしいからいくらでも飲めるよね。
A4. それ、ちょっと注意が必要! ヴァイツェンはフルーティーな香りのするビールで、ホップの苦味がちょっとという人にも人気のスタイル。しかし、実は炭酸ガスをたくさん含んだビールであることは意外に知られていない。他のドイツビール(ラガー)に比べて、2割増し程度の炭酸ガスが含まれている。その理由は、ヴァイツェンの原材料にある。飲んでみるとよく分かるが、ヴァイツェンには小麦麦芽特有のトロンとした粘りがあるのが感じられるはずだ。もし、炭酸ガスの量が少ないと、粘りに対して炭酸の刺激が弱く爽快感があまり感じられなくなるため、あえて炭酸ガスを多く含むように造っているのだ。炭酸ガスは、ビールの泡を作るだけでなく味わいの感じ方にも関係するということを覚えておこう。いろんなビールと料理を楽しみたいときは、ヴァイツェンで満腹にならないよう飲みすぎには注意だ。
Q5. 今日は家飲み。ベルジャンホワイトをグラスにそーっと注いで、完璧!
A5. それでもよいけど、違う注ぎ方も試してみて! ベルジャンホワイトの伝統的なタイプのものは、瓶内二次発酵という造り方で醸される。これは、主発酵を終えたビールに含まれている酵母を生きた状態のまま瓶に詰め、その密閉された瓶の中で緩やかに発酵を続けることを指す言葉。商品として流通している状態でも発酵が続いているため、開栓するタイミングによって少しずつ味わいが異なるのも特徴。このタイプのビールには酵母が含まれているが、しばらく冷蔵庫で安置していたものは酵母が底に沈んでいることが多い。酵母も一緒にグラスに注ぐことで、よりまろやかな口当たりになるのだが、そーっと注ぐと酵母が瓶の中に残ったままに。もちろん好みもあるが、ベルジャンホワイトのフルーティーな香りと小麦由来のクリーミーな感触をより引き立てるためには、酵母も一緒に注いでほしい。やり方は簡単。注ぎきる前に一度瓶を立て、手首を返すようにくるくるっと瓶を数回転させるだけ。酵母がビールに混ざった状態になるので、そのままグラスに注ぎきれば柔らかな口当たりのビールの出来上がりだ。