フラッグシップビールができるまで vol.9
~松江ビアへるん~
現在、日本全国から100以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。ブルワリーの方々に、DREAMBEERで扱っているビールの開発秘話を伺います。第9回目は、「松江ビアへるん」の「ペールエール」です。
松江ビアへるん
「松江ビアへるん」は、1999年4月に島根ビール株式会社が松江市で創業したブルワリーだ。同市は宍道湖畔と斐伊川本流(大橋川)沿いに発展した「水の都」であるとともに、「耳なし芳一」や「雪女」などで知られる文豪、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)がこよなく愛した地。ブルワリーの名称も、小泉八雲が地元松江で「へるん先生」と親しまれたことにちなんでいる。
同社の代表的な定番銘柄は、「縁結麦酒(えんむすびーる)スタウト」、「ヴァイツェン」、「ペールエール」、「ピルスナー」の4種類。全体的な傾向として、ボリュームのあるリッチな味わいが多い。
「自分たちが嫌いなものはつくらない、好きなビールをしっかりつくっていこう! が弊社全体のルール。その“好き”を突き詰めるうちに、島根の濃いめの味付けに合わせた濃厚なビールをつくる傾向になり、我々の特徴になったように思います」と、同社代表であり創業者の矢野 学さんは語る。
松江びあへるんのビールは、単体で楽しむというよりは、日々の晩酌とともに飲んだ際の味わいのバランスを最重要視しているという。たとえば日本人には「苦くて重い」という印象を与えがちな黒ビール。そのイメージを払拭すべく、縁結麦酒スタウトは原料に乳糖を加えるアイルランドで生まれた製法「ミルクスタウト」を採用した。一般的なスタウトよりもマイルドな味わいにすることで、食事とともに楽しめるよう工夫を凝らしている。
DREAMBEERで提供する「ペールエール」は、松江ビアへるんが創業当時から提供しているビールのひとつだ。原材料に使っている麦芽の甘味とカラメルモルトの香ばしさ、アメリカンホップの特徴を生かした柑橘系の香りとしっかりした苦味が感じられる。
最初のレシピは、矢野さんが東広島市にある種類総合研究所で試作した際につくられた。当初使ったホップは、柑橘系の代表的なホップの銘柄として国内外のブルワリーで多く使われていた「カスケード」のみ。グレープフルーツの皮のような香りと、青々しい草を思わせる香りを醸そうとしたが、なかなかホップの香りが出ずに苦労したという。
原因は、一度開封したホップを何度かに分けて使用していたことだった。一度ホップの袋を開封すると酸化が進むだけでなく、ホップの香り成分も揮散してしまう。原因を特定できてからは、5kgのホップ袋は新品使い切りを徹底しているという。
「ブルワリーでの最初の仕込みは、海外から輸入した醸造設備を使いこなすのに精一杯で記憶がありません……。最初につくったペールエールは醸造コンサルティングの方とともに飲んだように思うのですが、想像よりもあからさまに苦かった。それでも美味しいと感じたのですが、いま思えば『まだまだだったなぁ〜』と思います(笑)」(矢野さん)。
ペールエールは、他のビアスタイルと比べても原料のキャラクターが反映されやすいと感じているという。レシピは、醸造担当が変わるごとに受け継がれつつ、ブラッシュアップが繰り返されてきた。「麦芽、ホップのチョイス、配合、酵母の選択など、“変えていないがない”くらい変えています」と矢野さん。たとえば、現在使用しているホップは「チヌーク」「カスケード」「シトラ」の3種類だ。
矢野さんがつくりたいペールエールは、「レーダーチャートで円に近いバランスを持つビール」。麦芽やホップの特徴だけが突出することを避けるためには、農作物である原材料の特徴をきちんと把握して使いこなすことが求められていることを身にしみて感じている。
創業時からつくり続けてきたペールエールだが、食事と合わせられるバランスの良い味わいの追求は決してブレることがない。「『完成形の印象を大きく変えずに、さらに美味しく』を目指して、これからもブラッシュアップを続けていきますよ」。
矢野 学さんがペールエールに合わせたいフード
特にお肉との相性が抜群です。塩・胡椒した島根和牛に、甘味のある濃厚な山陰の再仕込み醤油にわさびをつけて。
松江ビアへるんをDREAMBEERで購入
■ 松江ビアへるん ピルスナー
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/179
■ 松江ビアへるん ヴァイツェン
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/178
■ 松江ビアへるん ペールエール
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/245