気鋭のブルワーが、いま取り組んでいること
~ 反射炉ビヤ ~

ビール王国47号より転載

伝統にしっかりと軸足を置き革新的なビール造りを続ける

世界最大級の権威あるビールコンテスト「World Beer Awards」で、「反射炉ビヤ」の「New World Kölsch(ニューワールドケルシュ)」が金賞を受賞したのは2023年のことだ。醸造長の山田隼平さんは喜びの言葉と共に、「よりいっそうの成長を目指していきたい」と口にした。現在はどんなテーマを掲げ、ビール造りに情熱を傾けているのか、話を聞いた。

「 日本のビール文化、酒文化、食文化に貢献できるブルワリーに成長していきたいです。挑戦したいことが山のようにあります」と山田さん

コラボを重ね、さらなる成長を

 山田さんがつかまらない。
 いつもレスポンスが早い彼だけに、尋常ではない忙しさの中にいるのかも知れないと、今号での取材のお願いは難しそうかと断念しかけたタイミングで、連絡がつながった。
「すみません! ここ数ヵ月、これまでにない立て込みようでして、お返事が遅れました!」
 元気な声が嬉しかった。いつも通りモチベーションの高さが伝わってくる。
 山田さんが今、一番力を入れていること。
 それは、リスペクトする他ブルワリーとのコラボだった。
 ここ1年は1ヵ月に1~2社のペースで。この後も、「ソウルブルワリー」や「ブラックタイドブリューイング」、「奈良醸造」との予定を組んでいるという。
 コラボが決まれば、レシピについて打合せを重ね、互いが互いのブルワリーに足を運んで、一度ずつ一緒に仕込みを行う。仕上がったビールについて意見交換をするのはもちろんのこと、原料や設備、醸造方法などあらゆることについて質問をぶつけ合う。
 尋ねられれば、「World Beer Awards」で金賞を受賞した「ニューワールドケルシュ」についても、「包み隠さずお話しします」と山田さん。互いに得るものが多い機会にしたいと考えているのだ。
 コラボが終わったら、学びや気づきを「反射炉ビヤ」にどのように活かせるかを考え、実践に落とし込んでいく。
 初めて取材をさせて貰った時から全く変わらない、ビール造りに対する真摯な姿勢。
 お会いする度に強く印象に残るのは、山田さんが本当に楽しそうであることだ。

トップギアで走り続けるブルワー

「今、自分の中でホットなのは、ハードサイダーと呼ばれるリンゴの酒を手掛けている長野のサイダリー「サノバスミス」さんとコラボした時に教えて貰った『熟成ホップ』です。文字通り、ある条件下でホップを熟成させたものなのですが、それを使ってリンゴのセゾンビールを仕込むと、私がこれまで経験してきた中で、最も果実の魅力を引き出すことに成功したのです。また、苦味を抑えて渋味を出す効果も興味深く感じました」 渋味はワインの魅力のひとつ。山田さんはワイン酵母や葡萄を使ったビール造りを長年続けている。
「ぜひ熟成ホップを掘り下げてみたい」との言葉に、ビアファンとしては、どんな味わいを生み出してくれるだろうと、期待せずにはいられなかった。
 ただ、既成概念にとらわれない革新的なビール造りだけが、「反射炉ビヤ」の魅力ではない。その一方で、伝統を重んじ、品質の向上を何よりも大切に考えているブルワリーであることも忘れたくない。
 ドイツのケルン地方で伝統的に醸造されている、とても繊細な誤魔化しの効かないビアスタイル「ケルシュ」造りに果敢に挑戦し、ビールコンテストで見事な結果を残したのも、それを証明するものだ。
「基本を決して疎かにせず、伝統と革新の両輪で、クラフトビールの魅力を広く発信していきたいと思っています」
 今後、山田さんは知識と技術と経験とアイデアとつながりを総動員して、どんな世界観を表現するブルワーに成長していくのか。目が離せない。

宮城の「ブラックタイドブリューイング」を訪ねてコラボした際の写真。ホップの使い方についてたくさんのことを学ばせて貰ったとのこと
韓国の「ソウルブルワリー」を訪ねてコラボした時の写真。様々なビアスタイルについて意見交換ができたそう
「 奈良醸造」とのコラボの決定はイベントがきっかけだったとか。クラシックなビール造りを予定していると山田さん
「 サノバスミス」とコラボした時の写真。完成したビールは「パーセゾン」と名付けられた。りんごと熟成ホップが織りなす上品な香りと味わいに魅せられる

反射炉ビヤ

静岡県伊豆の国市中272-1
https://kuraya-narusawa.co.jp/brewing/
https://www.instagram.com/hansharo_beer/