新規参画インタビュー vol.05
~和歌山ブルワリー~

現在、日本全国から100以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。その中でもひときわ輝くブルワリーの成り立ちや、DREAMBEERで新たに扱い始めたビールのご紹介をします。第5回目は、和歌山県和歌山市の「和歌山ブルワリー」(株式会社吉田)です。

和歌山ブルワリー

「和歌山ブルワリー」は、和歌山市内で初めてできたビール醸造所だ。株式会社吉田の代表、吉田友之さんが醸造責任者を務める。吉田さんは老舗酒販店の三代目。もとは居酒屋「紀州応援酒場 三代目」を運営する中、「和歌山のビールが飲みたい」というお客様の声に応えたいと考えたのがビール醸造のきっかけだ。

「お客様から『和歌山のビールでお勧めは』と聞かれた際は、紀南でつくられているビールを勧めていたのですが、ツーリストのお客様が醸造所に行きたくてもうちの店からは車で数時間かかってしまいます。なんとか市内でできたてのビールを飲んでもらえないかと思いました」(吉田さん)。

150ℓの発酵タンクを2基導入したブルーパブ「和歌山麦酒醸造所 三代目」として2016年3月に種類等製造免許(発泡酒)を取得、同年6月からオリジナルビールの提供を開始した。

2016年の11月には、店舗を現在の場所である和歌山城の北東エリア、十一番丁へ移転しリニューアルオープン。外販を見据えて醸造規模を増やしたのと同時に、すべての原材料を和歌山産でそろえる「オール和歌山」をコンセプトとした「AGARA CRAFT」ブランドを開始した。

2022年6月より稼働を始めた加太工場。目の前には海が広がる。今後タップルームもオープン予定

「AGARA(あがら)」とは、和歌山弁で「私たちの」という意味。ネーミングにあたっては吉田さんが和歌山大学の学生に依頼し、県民より公募した中から選ばれている。

「地域に愛されるビールにしたかった。自分の考えた案が選ばれてもそうでなくても、公募に参加された方々はブランドやビールに愛着を持ってくれるでしょう」と吉田さん。ネーミング決定のプロセスでは、一切口を出さなかった。「ブランドは、飲んだ人たちが広めてくれたり長い間かけて育っていったりするものだから。信頼して飲み続けてもらえるように、僕たちは質の高いビールをつくり続けるだけです」。

和歌山麦酒醸造所 三代目の醸造施設は、150ℓと600ℓの仕込釜と、150ℓの発酵タンク3基、300ℓが2基、600ℓが4基。加太工場(写真)は、2000ℓの仕込釜に同量の発酵タンクが5基、同量ブライトタンク1基を備える

料理との調和と新たなチャレンジ

和歌山ブルワリーの定番は、「AGARA CRAFT ペールエール」「同 ヴァイツェン」「同 IPA」の3種類だが、規格外や傷のある地元産ミカンを使った「ミカンのペールエール」や、桃、ミックスベリー、シャインマスカットなど、副原料を使ったビールも数多い。

どのビールにも共通するのは「料理との調和」だ。たとえば、DREAMBEERで扱う「AGARA CRAFT ゆずエール」も、マカオのホテルにある和食レストランの総料理長から「和食に合わせる日本酒はあるが、ビールがないのでつくってもらいたい」との依頼によって誕生した。

ベースはホワイトエール。ビールに使う素材の選定にあたっては、「フレンチでも隠し味で使うゆずなら、海外の方も受け入れやすいだろう」とゆずを選んだ。苦味が強すぎる、香りが弱すぎるなどのフィードバックをもらいながら、和食とのいいバランスを探っていったという。「料理に合わせられるビールとはどのようなものかを、さらに探求できる機会になったと思います」。

ゆずエール(上)とヘイジーIPAのラベル。従来のラベルは和歌山弁をあしらったもの。加太工場でつくるヘイジーIPAは近未来を感じさせるデザインにしている

その上で、和歌山ブルワリーは2022年より新しいチャレンジを始めている。第二工場である「加太工場」を設立したのだ。ブルーパブを経営する中、クラフトビールがツーリストの目的になり得ること、さらにはビール醸造所そのものが観光資源になることを確信しての決断だった。目の前は海水浴場で、海に沈む夕日が綺麗に見える。海水浴を楽しんだ人が水着のまま入店できるタップルームもオープン予定だ。

そして、加太工場でつくった最初のビールが、DREAMBEERでもおなじみの「ヘイジーIPA」だ。「まずはビール単体で楽しむことの多いヘイジーIPAをつくったこと自体が、チャレンジの第一歩です」。 加太工場では、これまで使っていなかったクライオホップ(ルプリンを凝縮してペレット化したもの)やホップオイル、新しい酵母を使ったビールをつくろうと計画している。加太周辺で採取した酵母が醸すビールにも挑戦したい、と吉田さんは目を輝かせた。

和歌山ブルワリーの醸造責任者を務める吉田友之さん。(写真左)和歌山大学大学院観光学研究科の院生として、観光の研究を進める顔も持つ。新工場設立にあたっては、地域活性の一助を目的として海沿いの加太に決めた

「ビールに携わる人」も大切な地域資源

和歌山ビールの活動で特に目を引くのが、ビール醸造に携わる人材の育成だ。同社ではビジネスとしてビール事業を始めたい人がしっかり学べる「人材育成」のプログラムを用意するほか、2022年には和歌山高専で酵母研究の学科に所属する学生が参加した醸造プロジェクトも話題になった。高専と1年のインターンシップを結び、ビール醸造の工程やビジネス展開方法なども学習できる内容だ。

学生たちは、発酵を試験管かビーカーでしか体験できない。学んでいることが実際社会でどう役に立っているのかを実感できれば、彼らの将来に大きな影響が与えられるのでは、と吉田さんは考えた。

最終的には、日高川町鐘巻にある「道成寺」の入相桜(いりあいざくら)から採取した酵母を使った「AGARA CRAFT ミックスベリーエール」「同 レモンエール」、那智勝浦町のクマノザクラ酵母を使った「同 三代目VER.」を販売。学生らはマッシュ中の糖組成変化表を作った上で煮沸時間短縮の提案をしてくれたり、発酵中は一日も欠かさずブルワリーに寄って発酵度を確認したりと、熱心に取り組んでくれたという。「科学・メンタルの両面で、僕らが学ばせてもらうことも多かったように思います」と吉田さんは振り返る。

吉田さんが人材育成に力を入れるのは、「和歌山を元気にしたい」という想いが大きい。地域の資源としては農作物が注目されがちだが、吉田さんはそれ以上に「ビールづくりに携わってくれる人も大切な資源」と考えているためだ。「和歌山に縁があって全国から来てくれた学生や人々が、ビールを通じて和歌山に来て・居てよかったと思ってくれればうれしいですね」と吉田さんは微笑んだ。

地域の人々が誇る農産物、ロケーション、愛着を持つブランドが揃う和歌山ブルワリーのビール。これらは、実際に足を運んで現地の人々と語らいながら飲みたくなる魅力に満ちている。

吉田友之さんがAGARA CRAFT ゆずエールに合わせたいフード

和食や魚料理をおすすめします。僕が特に好きなのはイカのフライとの組み合わせ。ホワイトエールなのでサクサクした衣の小麦とマッチしますし、ゆずの香りがフライの甘味に寄り添ってくれますよ。

和歌山ブルワリーをDREAMBEERで購入

■ AGARACRAFT ゆずエール

■ AGARACRAFT ヘイジーIPA