新規参画インタビュー vol.09
~柏 こまいぬブルワリー~

現在、日本全国から100以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。その中でもひときわ輝くブルワリーの成り立ちや、DREAMBEERで新たに扱い始めたビールのご紹介をします。第9回目は、千葉県柏市の「こまいぬブルワリー」です。

柏 こまいぬブルワリー

千葉県柏市で40年にわたり学習塾を経営していた丹羽文隆さんが還暦を迎え、東大農学部時代から興味を抱き続けていた醸造の世界に飛び込もうと決断した。「こまいぬ」は受験生にとって縁起がいいと、その学習塾に付けられた名前だ。

ハンガリーに留学し、欧州の近隣各国に地元で愛される醸造所があることを見ていた三男の一宇さんも賛同し、帰国後に参画。流通商社やIT企業に勤めた次男の岳悠さんが、その経験を活かして広報や営業を引き受けた。造る酒の種類をビールに決めたのは、一般的なビールが苦手だった母の和子さんが、東京・品川のT.Y. HARBOR BREWERYで開かれた長男の結婚式でクラフトビールを口にして、おいしく飲めたことがきっかけだった。

家族4人でこまいぬブルワリーを営む。
左から、次男の丹羽岳悠さん、母和子さん、父文隆さん、弟一宇さん

こうして家族それぞれが関与する形で、2017年に「こまいぬブルワリー」が立ち上がった。現在は、一宇さん、岳悠さん兄弟が主にブルワーとして、文隆さんは設備や瓶詰めを、和子さんは併設するレストランの調理などを担当。2023年にタンクを増やし、年間40キロ〜50キロリットルの製造が可能となった。

仕込みの様子。現在は主に岳悠さん(手前)、一宇さんがブルワーを務める

修業先の「羽田ブルワリー」のレシピで造り始めた後、初めてオリジナルレシピで仕込んだのがDREAMBEERでも提供する「柏はじめIPA〜ふくら雀(すずめ)〜」。柏で初めてのブルワリーであること、柏が一番という思いもその名に込めたこまいぬブルワリーのフラッグシップだ。

イングリッシュIPA寄りで、しっかりとモルティーでじっくり味わって飲むタイプのビールでありつつ、アロマホップのフルーティーな香りも楽しめる。ジャパン・グレートビア・アワーズ2019で金賞・ワールド・ビア・アワード2022でJapan Winner Goldを受賞した。

「柏はじめIPA〜ふくら雀〜」と並ぶ代表銘柄の「将門エール」もDREAMBEERで取り扱う。言わずと知れた平将門公の名を冠したこのビールのスタイルは国内では珍しいベルジャンデュベル。地域に「将門神社」があるなど柏とゆかりの深い将門公の「力強く荒々しいイメージと、一方で領民や農民に対しては優しかったとされる二面性をビールで表現しました」と岳悠さん。

アルコール度数7.5%と飲み応えがありながら、ホップが際立ち過ぎず麦芽のコクと発酵由来の香りがあり、複雑な味わいを楽しめる。「はやりのクラフトビールが好きな方というよりも、ウイスキーなど蒸留酒も好まれるお酒好きの方に、どっしりとした飲み心地で支持を頂いています」と言い、インターナショナル・ビアカップでも銀賞の評価を受けた。

そのほか、「手賀沼ポーター」「こまいぬエール」「カシワニエール」「白樺ヴァイツェン」を定番としてそろえる。「ビールの懐の広さ、多様性を伝えていきたいというのが原点でもあるので、はやっているからとIPAばかり造るわけではなく、いろいろな国のさまざまなスタイルでおいしいと思うものを造っていくのが僕らのスタイルです」(岳悠さん)

ビールの多様性を伝えたいという思いから、定番を6種類と幅広く用意し、地元農家と連携して季節商品も展開する

一宇さんが見てきた、地元に根付き愛される欧州のビール文化に倣い、「地域にそのビールがあることで、みんなの暮らしがちょっと楽しく、健やかになれば」と岳悠さんは願う。それを実現するため、地域の医療的ケア児と家族を支援するプロジェクトとコラボレーションしてチャリティービールを販売したり、地域の子どもにホップ畑の作業体験を提供したり、大人向けのビール造り教室などを開いたりしてきた。

JR常磐線柏駅から徒歩12分の場所にあるブルワリーに併設するレストランの内観
レストランで提供するフードとビール。料理は和子さんが担当する

柏は利根川水系の豊かな恵みを受け、竹鶴政孝がニッカウヰスキーの工場を設立するほど酒造りにも適した地域であるとともに、豊かな農産物の産地でもある。地元でワイン用のブドウ造りをしている農家と組んでグレープエールを試作し、千葉が一大産地であるナシの農家から廃棄に回されるナシを引き取ってビールにする計画もしている。

自分たちの畑で育てた麦を麦芽化してビールを造ることにも挑戦。最終的には「地元の素材だけでビールを造ってみたい」というのがブルワリー立ち上げ当初からの家族の夢だ。「ただ、それでおいしくなければ意味がありません。とりあえず地元素材を使ってみました、ではなく、それに耐え得るクオリティーのものが用意できることが条件です」と岳悠さんは極めて冷静。「飲んでおいしいなと思ってもらって、それが柏産だったらなお素晴らしい、という順序ですよね」

「柏には面白いことをしている方がたくさんいらっしゃいます。そうした地元のプレーヤーと関係しながら、柏に面白いブルワリーがある、面白いビールがあるから行ってみたいと思ってもらえるような活動をしていければ」。家族4人で始めた小さなブルワリーが、地域の資源を活かし、地域のプレーヤーを巻き込み、地域に人を呼び込む。

丹羽 岳悠 さんが合わせたいフード

どちらもビール単体の味がしっかりありますので、「柏はじめIPA」はスパイス系の料理やトマトがきいたものにも合うと思いますし、「将門エール」は煮込み料理やみそ田楽のように、甘みがあって味が濃厚なものにも相性がいいですね。

DREAMBEERで取り扱う柏 こまいぬブルワリーの銘柄

■柏はじめIPA

■将門麦酒