日本のブルワリー探訪 vol.11
~Usami brewery~

現在、日本全国から100以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。その中でも長きに亘り日本のクラフトビールシーンに貢献してきたブルワリーにスポットを当て、各々がビールづくりで大切にしている考え方を中心にご紹介します。第11回は、静岡県伊東市宇佐美の「Usami brewery(宇佐美麦酒製造)」です。

飲む人にそっと寄り添う、癒しのビール造りを追求する宇佐美麦酒製造

「静岡県、伊豆東部の宇佐美という街が、心から好きです」
 代表である加藤泰克さんの印象的な言葉だ。
 美しい海と山に囲まれた、穏やかな時間がゆっくりと流れる宇佐美には日本の原風景がある。
 何より人が素朴で人情味に溢れ、お互いを思いやる交流がある。
 クラフトビール造りの目的は、地域活性化。
「優しく、気取らない、飲む人にそっと寄り添う、癒しのクラフトビール造り」をコンセプトに、地元に密着した誠実な経営を続けている。
「元々はヨーロピアンビールという会社が運営していたのですが、10年ほど前にご縁をいただき、私どもが引き継がせていただいています。『宇佐美と共鳴、共存し、一緒に成長し続けよう』という理念に共感しており、醸造スタッフはそのままに、ビールの味わいも変えることなく受け継いでいます。そしてこれからも守り続けます」

「宇佐美麦酒製造として出来ることを考え抜き、宇佐美と共に成長していく。それが目標であり、夢です」と代表の加藤さん

フルーティーで味わい深いエールビールをお客様に

 ほんの少しの環境の変化が味わいや品質に影響するため、宇佐美麦酒製造の醸造スタッフは、常に五感を研ぎ澄ます。
 これは1998年の創業当初、指導者として迎えたハンガリーのブラウマイスター、ベアータ氏の教えだという。それを26年にわたり真摯に実践し続けているのだ。
 氏は言った。「私は、言葉で醸造は教えません。ビールは生き物で目まぐるしく変化するからです。五感でそれを感じてほしい。私のやることをしっかりと眼に焼き付け、感じて、考えて、染み込ませていってください」
 追求しているのは、複雑で、繊細で味わい深いエールビール造り。
 日本人に馴染みの深いラガービールとは一線を画す、豊かな風味を心ゆくまで堪能して貰いたいとの思いがある。
「『おいしい』との声を頂戴した時の嬉しさは格別です。常温に近づくにつれてより香り立ち、また違った味わいの表情を見せるエールビールならではの魅力もお伝えしたいと考えています」

「1Klの発酵タンクが7基、1Klの熟成タンクが14基、年間300 Kl生産可能な、1998年にハンガリーから輸入した設備です」と加藤さん
創業時から受け継がれるベアータ氏の教えを守り、誠実なビールを造りを続ける醸造スタッフ

伊豆の海洋深層水を使った、宇佐美らしいビール造りで地元をアピール

 創業以来愛され続ける味わいを守る一方で、加藤さんは運営を引き継いだことを機に、新たな銘柄の開発にも取り組んだ。
「創業当時から変わらないラインナップは『伊豆の地ビール』、そして新たにリリースしたのがDREAMBEERさんに提供させて貰っている、『Usami Golden Ale』と『Usami Saison』です。ネーミングに『Usami』という言葉を冠することで、地元のアピールにつながるようにと考えました。宇佐美をもっともっと活性化させたい、宇佐美にたくさんの方に観光に来て貰いたい。そのような思いが徐々に実を結び、宇佐美麦酒製造の名前が広がり始めていることを実感しています。DREAMBEERさんにもとても感謝しています」
 味わいにおいても、宇佐美らしさを大切にしたとのこと。
「原材料に地元の物を使えないかと、目の前に広がる『相模湾』を見ながら考えていた時、『そうだ!海水だ!』と思いつきました。運よくブルワリーの近くでDHCさんが相模湾から海洋深層水を汲み上げおり、それを仕入れさせて貰って使用できることになりました。海のミネラルが豊富に含まれているため、よりビールに味わい深さが生まれました。ぜひ飲んでみてください」

美しい海と山に囲まれた宇佐美の街

さらに魅力的な街づくりをしていきたい

 クラフトビール造りを通して、「温泉があり、豊かな自然がある観光地としての宇佐美の魅力」を全部楽しんで貰える「街づくり」が今後の目標と加藤さん。「機会に恵まれれば他地域とも協力し合いながら、様々な取り組みを行っていきたいと思っています」。
 実際に2022年には隣町である東伊豆町の観光協会と連携し、ご当地ビール「ムーンロード クラフトビール」を製造し話題を呼んだ。宇佐美だけにとどまらず、宇佐美のある東伊豆を、もっといえば静岡を盛り上げていきたいと情熱を燃やす。
 加藤さんには何を行う時にも大切にしていることがある。
 それは、「一歩前を見ること」。どんなビールを造りたいのか、どんな街にしていきたいのか、具体的にビジョンを描き、過去に行ってきたことを振り返って、「改善すべき点はないか」と分析し、経験を必ず次に活かす。
「宇佐美でビール造りをさせて貰っていることに幸せと誇りを感じています。その恩返しをしたいとスタッフ一同、力を合わせていきます」
 宇佐美麦酒製造の活動は今後ますます精力的になっていくに違いない。躍進が楽しみだ。

加藤さんが「Usami Golden ale」「USAMI Saison」と合わせたいフード

目の前が相模湾の宇佐美は海鮮料理がおいしいため、「Usami Golden ale」は、それに合わせやすい「程よく苦味の効いた、すっきりとした味わい」に仕上げています。
「USAMI Saison」は華やかなホップの香りと、カラメル麦芽由来のボディ感が特徴で、スパイシーな肉料理と相性がよいです。ブルワリー併設の「宇佐美BBQガーデン」でお出ししているステーキとマッチするよう試作を重ねました。

DREAMBEERで購入

◆ Golden Ale

◆ Saison