日本のブルワリー探訪 vol.14
~胎内高原ビール~

現在、日本全国から100以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。その中でも長きに亘り日本のクラフトビールシーンに貢献してきたブルワリーにスポットを当て、各々がビールづくりで大切にしている考え方を中心にご紹介します。第14回は、新潟県胎内市の「胎内高原ビール」です。

伝統的なドイツ製法を大切にしている、胎内高原ビール

 1999年に新潟県胎内市(旧黒川村)の地域活性化事業として始まった「胎内高原ビール」。 2012年からは「新潟ビール醸造株式会社」が事業を引き継ぎ、「よりいっそう地域に根差し、発展していこう」と醸造量を伸ばしてきた。
「新型コロナウイルス感染拡大によって大打撃を受けましたが、現在は何とか体制を立て直し、再びビール造りに情熱を注いでいます」とは代表の浅野重幸さん。四半世紀にわたって受け継いで来た、ものづくりの精神や技術を途絶えさせたくないとの気持ちが、逆境を乗り越える大きな力になったという。

「創業以来、仕込み水はブルワリーの南東にそびえる飯豊連峰の伏流水を使用しています。日本でも珍しい超軟水(硬度14度)で、すっきりと飲みやすい味わいに仕上がります」
 水の素晴らしさをそのまま活かせるように、ビール大国ドイツの伝統製法を手本とし、ビール純粋令(「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」という1516年にドイツで定められた法律)に則ったビール造りを真摯に続けている。
 またその一方で、新潟らしいクラフトビールを造ろうと、「吟籠麦酒」というブランドも2020年に立ち上げ、今ではフラグシップとして日本各地で広がっている(副原料として地元産のコシヒカリを使用している)。
「『胎内発のクラフトビールで新潟を元気に』を合言葉にしています。伝統を重んじて事業活動を行っていますが、変化すべきところは変化すること、新しいものを取り入れながら進化することを大切にしています。様々な提案を通して、胎内、そして新潟を盛り上げていきたいです」

高校の恩師が教えてくれた「克己」という孔子の言葉(己の欲望や邪念に打ち勝つという意味がある)を大切に、日々ブルワリーの運営に全力を尽くしている代表の浅野重幸さん(手前)、クラフトビール造りによって地元を盛り上げていきたいと浅野さんと心をひとつにする(後ろ左手から)管理部総務の九原長之さん、醸造スタッフの坂井俊平さん、醸造長の今井亮平さん。コロナ前の年間約60KLの醸造量回復を目下の目標とし、将来的にはブルワリーの年間最大可能醸造量100KLを目指す

一期一会のビール造り

「実は数年前までビールに対して苦手意識がありました。苦味や炭酸に抵抗があったのです」
 日本酒文化の根付く新潟で生まれ育ったのも理由のひとつかも知れないと浅野さん。
「コロナ禍に胎内高原ビール造りに関わることになり、実際に口にしてみた時に、印象が180度変わりました。豊かな香りと味わい深さに魅せられたのです」
 ヨーロッパで仕事をしていた友人に、ドイツのビール文化についても教えて貰った。
 長い歴史や伝統があること、ビールが全ての国民の日常生活に「欠かせないもの」として浸透していることなどを知り、素敵だと思った。
「そして、こう考えるようになりました。自分のように、飲まず嫌いになってしまっている方は案外少なくないのではないか――。胎内高原ビールによって、ひとりでも多くの方にビールの素晴らしさを伝えたい」
 自分たちのビールを味わって貰えるのは、「これが最後かも知れない」「一生に一度の機会かもしれない」。そんな「一期一会」の精神でビール造りに臨んでいる。
 だから、イベントや飲食店などで口にした人の笑顔を見た時や、酒屋などで手に取ってくれる人の姿を見た時は、この上ない喜びに包まれる。さらに試行錯誤を重ね、味わいや品質をブラッシュアップしていこうと意欲が湧いてくる。
 嬉しいことにリピーターとなって応援を続けてくれるファンが増え続けている。

2023年10月に「空を見上げて飲むビール」をコンセプトにボトルのラベルデザインをリニューアル。「胎内の自然の美しさをラベルから感じて貰えるように」「空を見上げてビールを飲むことで、どこにいても心でつながれるように」。そのような思いが込められている

空を見上げて乾杯を

 現在、DREAMBEERに提供しているのは、焙煎モルト由来の濃厚なコクと控えめなホップの苦味が見事にバランスしている「アルト」、柑橘系シトラホップを通常の約3.5倍使用し爽やかな香りと苦味を引き出した「シトラヴァイツェン」、新潟県産コシヒカリの活用で軽やかな飲み口と後を引く余韻を実現した「吟籠IPA」の3銘柄(「アルト」と「シトラヴァイツェン」の旧ラベルを楽しめるのは、DREAMBEERだけ)。
 浅野さんは言う。「アルトはDREAMBEERさんのラインナップであまり目にしなかったため、お客様にその魅力を知って貰えるように、シトラヴァイツェンは女性にも男性にも好まれる苦味の塩梅を追求した自信作として、IPAは現在も理想の味わいを追求し続けている私たちのチャレンジ精神を感じて貰えるようにセレクトしました。存分にお楽しみいただきたいです」

 近い将来、叶えたい夢がある。
 胎内は空がとても澄んでいて、星空が美しいことで知られており、夏には市内で「星まつり」が開かれる。その星まつりで、コロナ禍に苦労を共にした全社員で、空を見ながら乾杯したい。
 昨年の10月に「空を見上げて飲むビール」をコンセプトにボトルラベルを一新したのも、その夢があったからだ。
「まだ完全にコロナの打撃から立ち直ったわけではありませんが、皆で心をひとつにし、今後も魅力的なビール造りを続けていきたいと考えています。そして、長期的なビジョンとして、『胎内高原ビール』と『吟籠麦酒』を「地元をアピールできるコンテンツ」に育て、たくさんの人をつなげていきたいです。応援を宜しくお願いします」

「胎内高原ビール」は豊かな自然に囲まれた山の駅「胎内高原ビール園」で醸造されている

浅野さんが「胎内高原ビール アルト」「胎内高原ビール シトラヴァイツェン」「胎内高原ビール 吟籠IPA」と合わせたいフード

味わい深さと飲みやすさを両立させた「アルト」は、ビーフシチューや豚の角煮などの肉の煮物料理や焼きそばや焼き鳥などのたれの濃い料理、チョコレートなどのデザートに合う万能型です。程よい苦味とフルーティな香りが特徴の「シトラヴァイツェン」にはサラダやバーニャカウダなどの野菜料理がよく合います。乾杯の一杯目にどうぞ。すっきり飲みやすく仕上げた「IPA」には唐揚げや串カツなどの揚げ物がぴったり。おすすめです!

DREAMBEERで取り扱っている銘柄

◆ アルト

◆ シトラヴァイツェン

◆ 吟籠IPA