新規参画ブルワリー探訪 vol.15
~SOUTH HORIZON BREWING~

現在、日本全国から200以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。その中でもひときわ輝くブルワリーの成り立ちや、DREAMBEERで新たに扱い始めたビールのご紹介をします。第15回は、高知県高知市の「SOUTH HORIZON BREWING」です。

ビール造りで地方創生を目指す気鋭のブルワリー。SOUTH HORIZON BREWING

 大阪を拠点に雑貨事業や食品事業を展開する株式会社チョカスが、高知県高知市で2023年に立ち上げたのが「SOUTH HORIZON BREWING」だ。
「弊社の事業部長が高知県出身でして、彼の地元に貢献したいとの熱い想いが出発点でした」と教えてくれたのはヘッドブルワーの中村託也さん。
 高知市には「桂浜」や「高知城」、「よさこい祭り」といった全国的に知られている観光資源がある。しかしながらその一方で、少子高齢化による人口減少や産業衰退による若者の県外流出といった社会課題を抱えている。
 そこでクラフトビール造りに力を入れて街を盛り上げ、地方創生につなげていきたいという。
「SOUTH HORIZON BREWING」の現在のレギュラービールは、DREAMBEERに提供中のフラッグシップ「All Aboard」をはじめ、「Nap on Deck」、「Pacifica Common」など計6種。ネーミングは船や船員用語をモチーフに、パッケージデザインは土佐湾から見える水平線をイメージしているとのこと。ちなみに「Pacifica Common」は、世界最大級のビールコンテスト「ワールドビアカップ2024」にて銅賞を受賞し、早くも高知市が世界から注目される機会を創出している。
 中村さんは言う。
「絶好のスタートを切ることができました。慢心することなく、真摯にビール造りと向き合っていきたいと思っています」

世界最大級のビールコンテスト「ワールドビアカップ2024」で銅賞に輝いた「Pacifica Common」。味わい深さと飲みやすさが、まだクラフトビール文化が根付いていない地元でも人気を呼んでいる

科学的アプローチを大切にし、高品質のビールを提供したい

 中村さんは、「SOUTH HORIZON BREWING」の立ち上げ前、イギリスのスコットランドにある醸造と蒸留を学べる「ヘリオット・ワット大学」で濃密な4年間を過ごし、その後は国内のブルワリーで経験を積んでいる。
「元々は料理人になりたいと考えていたのですが、学生時代にクラフトビールと出合い、おいしさに魅了され、ブルワーの道を夢見るようになりました。日本の大学を卒業後、今の時代は英語も必要なスキルだと、父に語学留学をすすめられた際に、こんなチャンスは二度とないと、語学だけでなく、醸造を専門に学べる大学に留学させてほしいと懇願しました。父は条件付きで首を縦に振ってくれました」
 単位をひとつでも落としたら、即刻退学し、日本に帰ってくること――。
 英語の話せない、しかも理数系の苦手な中村さんにとって条件は厳しかったが、「今本気にならなくて、いつ本気になるのか」という気持ちだった。
「4年間、ずっと張りつめていたように思います。学校での授業を終えたら深夜まで自宅で予習と復習、そんな毎日を過ごしていました。大変でしたが、醸造に関する専門知識を得られたことは、私の大きな財産になっています」

「おいしそうに飲んでいただくのが何よりの喜び。ブルワーになって本当によかったと思っています」と中村さん

 中村さんが「SOUTH HORIZON BREWING」で実践していること。
 それは、すべての醸造工程において、可能な限り数値化、データ化を徹底し、問題点や改善点を可視化すること。科学的なアプローチによって、安定して高品質なビールを提供できる醸造管理システムの構築に注力しているという。
 守破離――。
 これは千利休が修行の過程における師弟関係のありかたを説いた言葉で、中村さんの座右の銘だ。「守」は師の教えを忠実に守ること。「破」は自分で考え工夫すること。「離」は独自の新しい世界を確立することを意味する。
 中村さんが今後、手掛けているビールをどのようにブラッシュアップしていくのか、またどのような新たな味わいを生み出していくのか、期待に胸を膨らませているビアファンは多いに違いない。

醸造設備の特徴は溶存酸素計を導入していること。数値を可視化し、新鮮な味わいの維持に努めている。年間約100klの生産が可能

オール高知県産を目指して

「SOUTH HORIZON BREWING」には夢がある。
 オール高知県産の原料で造るクラフトビールの提供だ。
 既に近隣の農家と連携し、ビールの主原料である大麦やホップの栽培に取り組み始めているという。
「現在は、原料の一部として使用させて貰っている状況ですが、将来的には『オール高知産のクラフトビール』造りを実現し、それらを提供するレストランも含め6次産業化による地域活性化も目標にしています。SOUTH HORIZON BREWINGの今後の展開に注目していただけると幸いです」

中村さんが「All Aboard」「Nap on Deck」「Pacifica Common」と合わせたいフード

「All Aboard」は、ウエストコーストIPAらしいキレのある苦味が特徴です。肉々しいハンバーガーと合わせると相性抜群です。「Nap on Deck」は、グレープフルーツを使用したアメリカンペールエール。柑橘のアロマとグレープフルーツ由来のほろ苦さが特徴です。爽やかな味わいなので、唐揚げのような揚げ物との相性がバッチリです。苦味と飲み応えのバランスを重視した「Pacifica Common」はアメリカンスタイル アンバーラガー。肉料理でも魚料理でも心地よく寄り添い、調和します。

DREAMBEERで取り扱っている銘柄

◆ All Aboard

◆ Nap on Deck

◆ Pacifica Common