日本のブルワリー探訪 vol.17
~日南麦酒~
現在、日本全国から250以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。その中でも長きに亘り日本のクラフトビールシーンに貢献してきたブルワリーにスポットを当て、各々がビールづくりで大切にしている考え方を中心にご紹介します。第17回は、宮崎県日南市の「日南麦酒」です。
歴史ある焼酎蔵がクラフトビールを醸造。日南麦酒
1877年創業の「櫻乃峰酒造」の7代目社長である橋本彰史さんが、ブルワリー「日南麦酒」を立ち上げたのは2017年のこと。
「跡継ぎのいない歴史ある焼酎蔵を、縁あって父が引き継ぐことになったのが、私が酒業界にかかわるきっかけになりました。元々は自動車部品を扱う仕事が家業だったこともあり、まさか自分が父から蔵を継ぐことになるとは想像もしていませんでした」
蔵を継いでからおよそ10年、焼酎造りに携わった。
技術や知識を身に付けただけでなく、ものづくりの本質や職人仕事の何たるかを学んだ。
とにかく誠実であること。そして、心をこめること――。
焼酎造りを他の職人に任せ、クラフトビール造りをはじめてからも、橋本さんが変わらず一番大切にしていることだ。
「本当によいものを造り続けていれば、万人ではなくても必ず誰かが見つけ出し、根強いファンになってくださるに違いない。そう信じています。決して手を抜くことなく、味わいと品質の向上に努めています」
飲みやすさと飲み応えを追求
「新しいことに挑戦したかったのです」
なぜブルワリーを開業したのか、との問いに、橋本さんから返ってきた答えだ。
150年近く受け継がれてきた焼酎の味わいを守ることに誇りとやりがいを感じている。
その一方で、「職人になったからには自分が起点となって、何かをゼロから生み出してみたい」との思いが常々あった。
「クラフトビールに興味を持ったのは、東京のとあるバーを訪ねた時です。自家醸造ビールを味わわせて貰ったのですが、おいしさに感動したのはもちろん、小規模の設備でビール醸造が可能であることを知ったのが転機となりました」
橋本さんは「これだ!」と心に決めると、早速知識を身に付けるための勉強と設備導入の準備を進め、数年来の目標を実現した。
目指しているのは、誰もが飲みやすく、また飲み応えを感じられる味わいだ。
「焼酎と同様にビールも奥が深いです」と橋本さん。
だからこそ、職人魂をくすぐられる。
ブルワーになって8年目。仕込み毎にデータを詳細に取り、ますます熱心に研究に取り組んでいるという。
「糖化温度やホップの煮沸温度等を微調整したり、ビールに溶け込ませる炭酸ガスのベストな量を探ったり、ブルワー仲間をはじめ、たくさんの方々に教えを請いながら、理想を追求しています。焼酎もビールも酵母に働いて貰って醸し出すもの。自分ができるのは愛情を持って手助けすること。子育てとも似ています。手塩にかけて造り上げた味わいを、大勢でワイワイと語り合いながら楽しんで貰えたら嬉しいです」
地元愛溢れるクラフトビール
現在、DREAMBEERに提供しているのは、宮崎のサーフスポット「木崎浜」をイメージして造った「木崎浜ペールエール」と、「日本の棚田百選」に選定されている「坂元棚田」で栽培された米(ヒノヒカリ)を副原料に使っている「坂元棚田エール(ビアスタイルはセゾン)」。
いずれも橋本さんの地元愛を感じられる人気銘柄だ。
「DREAMBEERさんとご縁をいただけたことで、九州から関東くらいまでだった販路が、ぐっと広くなりました。とても感謝しています。ひとりでも多くの全国各地のビアファンに『日南麦酒』を味わってほしいですし、宮崎、そして日南に注目して貰えるきっかけになったら幸せです」
橋本さんが「木崎浜ペールエール」「坂元棚田エール」と合わせたいフード
ホップ由来の爽やかな香りと心地よい苦味が特徴の「木崎浜ペールエール」は、口いっぱいにバンズとパテの旨味が広がるハンバーガーと合わせてみてください。互いの風味が響き合い後を引きます。セゾン酵母由来のフルーティーかつスパイシーな風味と、副原料の米の甘味が特徴の「坂元棚田エール」は、和食全般と相性がよいです。個人的にはエビの天ぷらと合わせるのがおすすめ。ぜひ試してみてください。