INTERVIEW

クラフトビールの聖地、
「ポパイ」創業者
青木辰男さんに聞く

目次

    日本のクラフトビールのポテンシャル

    多くのビールファンに愛される「麦酒倶楽部ポパイ」。聖地ともいわれる「ポパイ」を立ち上げ、日本のクラフトビールの発展に尽力されてきた創業者の青木さんに、クラフトビールの魅力や日本のクラフトビールが持つポテンシャル、そしてDREAMBEERへの想いについてお話を伺いました。

    青木辰男氏●1985年、日本初のクラフトビール専門店「麦酒倶楽部 ポパイ」を創業。それまでタブーとされていた数社のビールをひとつの店で扱うことを、日本で初めて実現させた。100以上のタップを持ち、常時70〜80種のケグ樽を用意する「ポパイ」は、今もビールファンの聖地だ。新規ブルワリーやビアパブのコンサルタント、ビールイベントの立ち上げなどを通して業界全体の発展に尽力。2020年には地元・両国にブルワリー「両国麦酒研究所」開業をコンサルティングした。「株式会社パーフェクトビアサポート」代表取締役。NPO法人「日本の地ビールを支援する会」理事長。「ジャパンクラフトビアパブ協会」顧問。

    麦酒倶楽部 ポパイ web:http://www.lares.dti.ne.jp/~ppy/

    ビールの奥深い魅力と楽しみ方

    他のお酒にはない、クラフトビールの魅力を教えてください。

    味の良さ、スタイルの多様さ。それとクラフトビールの場合、果物やお茶など、いろいろなものを入れられるのもいいですね。スタイルの幅が広いから、食事に合わせやすいのも魅力です。100以上あるビアスタイルをすべて言える人は少ないと思いますが、それだけ知る楽しみやウンチクを語る楽しみもあるということ。クラフトビールの世界は奥深く、磁力があるんですよ。

    クラフトビールを飲む人は増えていると感じますか?

    そうですね。クラフトビールを飲める場所が増えたので、認知も増えているように思います。最近、把握しきれないくらいマイクロブルワリーが増えています。東京近郊で200を超えたと聞いたのが2、3年前ですから、今はもっと増えているでしょう。僕が代表を務めている「(株)パーフェクトビアサポート」にも「ブルワリーを始めたい」という相談が増えていて、開設のお手伝いをしていますが、そういうビール専門店でなくても、例えば肉料理の店でタップを数本設置するようなケースもありますね。

    今、日本ではどんなビールが好まれていますか?

    やっぱり、日本はアメリカの流行の影響を受けていますので、ヘイジーIPAに人気がありますね。その前にIPAが流行りましたが、強い苦味に飽きてきたところに、同じIPAからこのスタイルが登場したんです。フルーティーで苦味が少なく、飲みやすいビールです。

    HAZY=ヘイジーとは「霞んでいる」という意味。新しいビアスタイルとして2018年3月にガイドラインに加わった。小麦、ホップ、モルト由来の成分等による濁った(ヘイジーな)外観が特徴。苦味は抑え目で、ホップによる味わいの影響度が高く、強いフルーティーな香りと味わいがある。

    世界のトレンドは、どのような潮流でしょうか?

    海外では、今はカスクエイジに人気がありますね。いろいろなオーク樽に漬けて香りや風味を楽しむ。あとはサワービール。日本ではビールが酸っぱいというイメージがないので、一部のマニアだけですが、アメリカやヨーロッパはワインの文化が根付いていますので、酸っぱい味に馴染みがあるし好まれるんです。

    そのようなビールの多様性を、日本のビールファンに知ってもらうには、何が必要だと思いますか?

    クラフトビールの良さとは、スタイルの多さだと僕は思っています。ところが新しく開店したビアパブに行ってみると、同じようなビールが並んでいることが多い。例えば40タップあるのに、置いているのはペールエールにIPA、せいぜいヴァイツェンまで。7タップある店で6タップがIPAという店もあります。売れるものを置くのはある程度仕方がないにしても、ビールファンを広げていくには、クラフトビールの多様なスタイルを知ってもらうようなラインナップも必要だということを理解してもらえるといいですね。
    僕が「ポパイ」を始めた頃、ヴィンテージ物やバーレーワイン、インペリアスタウトなど、日本では知られていないビアスタイルのビールをあえて置いていました。それを飲んだ人が「え、こんなビールもあるんだ」と衝撃を受けて、マニアックなクラフトビールファンになってくれたんです。

    クラフトビール専門店「麦酒倶楽部 ポパイ」

    ビール初心者の方は、どんなところに着目すると、より楽しめるでしょうか?

    例えば注ぎ方に着目してみる。「泡」はビールの中に溶けている炭酸ガスが注ぐ時に抜けていくことでできます。エールビールのように炭酸ガスが弱いビールの場合、静かに注いであげれば、ビールの炭酸ガスが抜けずに残る。だから、「泡」がないほうが美味しいんです。そういうビールの個性が、注ぐグラスによって一層感じられる。なぜ、そのグラスが使われているのかに着目するのも楽しいですよ。

    DREAMBEERへの期待

    近年、家飲みが増えていますが、どのような変化を感じていらっしゃいますか?

    クラフトビールの家飲みは、ひと昔前はゼロでしたよね。せいぜい、お土産で旅先の地ビールを買ってくるくらいで。しかも、そんなに美味しくなかった。今は、優れた個性的なビールを造るブルワリーが増えました。ビールを製造する設備やフィルター技術も向上し、ビールが劣化することが少なく、味も格段に良くなっています。そういったことを背景に、本当に美味しいビールを求めて、通販等でお取り寄せいただけるお客さんも増えていると思います。

    新しい家飲みスタイルを提案するDREAMBEERについてお聞きになった時、どのような印象を持たれましたか?

    やっと来たか!と思いました。家でクラフトビールを飲んでもらうということは、僕の目標でもありましたから。それで消費が増えれば業界にとっても相当なプラスになる事業で、本当にありがたいなと。サーバーが家にあるという満足感もあると思いますし、何よりも、家で、タップで飲めることに魅力を感じます。「ポパイ」にも、自分でビールを注ぐ「ビアタワー」というサービスがあり、グループのお客さんに人気があるんですよ。多くのブルワーにDREAMBEERに参加してもらって、多種多様なビールを楽しめるようになれば最高ですね。

    DREAMBEERが多くのビールファンに支持されるためには、何が重要でしょうか?

    日本の場合、流通が封建的でコンビニや大手スーパーでクラフトビールを並べるにはハードルがいくつもあります。だから、美味しいクラフトビールを飲みたいと思ったら、電車を乗り継いで飲ませてくれるところまで行くしかありませんでした。DREAMBEERのサービスではそういったしがらみがなくなり、家にいながら日本全国のブルワリーやブルワー、彼らが造るクラフトビールを知り、飲んで楽しんでもらえます。
    クラフトビールは、同じ原料、同じレシピで造っても、造る人や場所が変わると味も変わる。同じブルワリーの同じビールでさえ、前回より美味しかったり、そうでなかったりします。そういうことを経験していくと、「何で違うんだろう?」という疑問や「ちょっと勉強してみよう」といった欲求が出てきます。そうしていく中で、クラフトビールを身近に感じてもらうことがビールファンに支持していただくうえで重要だと思います。

    DREAMBEERのサーバーはダブルタップです。青木さんならどんなふうに楽しまれますか?

    クラフトビールの多様性を楽しむには、タップが2本あるのはとても良いですね。
    1本はパーッと飲めるようなビールにして、もう一つは飯を食って風呂に入ってから寝る前にちょっと飲むようなアルコール度数の高いビールにしたいですね(笑)。

    青木さん、ありがとうございました!

    青木さんによるDREAMBEERサーバーのレビューはこちら
    「麦酒倶楽部 POPEYE」創業者、青木辰男氏がDREAMBEEERの魅力を語る!
    https://www.youtube.com/watch?v=LVbrHrbMahw