ドルチェとビールの素晴らしきマリアージュの世界

ビール王国41号より転載
文:並河真吾 写真:津久井耀平

クラフトビールが好きになり、出合ったことのない味わいを求めて様々な銘柄を購入するようになったという「trat toria e poi」の吉田真弓さん。最終回となる今回は「ウッドミルブルワリー・京都」の辻本大和行さんが手掛ける「はっさくホワイト」を用意し、「最高にマッチするドルチェ(デザート)」を考えていただいた。京都宇治産や和歌山産のハッサクをふんだんに使ったベルジャンスタイルのホワイトエールから、吉田さんはどのようなクリエイティブなひと皿を発想してくれるだろう。完成の連絡が楽しみでならなかった。

ドルチェとビールの冬のマリアージュ
金柑と紅茶のティラミス
〜ラプサンスーチョンの香り〜
      &
ウッドミルブルワリー・京都 はっさくホワイト

初めて出合ったビールの味わいに知る人ぞ知る中国紅茶の使用を発想

「とても飲み心地のよい柔らかな味わいに、素晴らしさを感じずにはいられないクラフトビールでした。レモンやユズやスダチの酸味とは異なる、ハッサク由来の尖りのない穏やかな柑橘の風味が、ドルチェづくりの発想の出発点になりました」
 吉田さんは初めて口にした「はっさくホワイト」の奥行きのあるおいしさに、たちまち魅了されたとのこと。
 いつものように旬の食材で季節を感じて貰いたいと、柑橘つながりの「金柑」をコンポートにして使うことにした。強い甘味と程よい酸味、ほのかな苦味が魅力の冬の味覚だ。
 ベースを「ティラミス」にしようと決めたのは、濃厚な味わいがはっさくホワイトの爽やかな飲み口とマッチすると考えたから。 
 また柑橘の風味との相性のよさに着目し、「コーヒーではなく紅茶を使ってティラミスを仕上げることにしました」と吉田さん。 チャレンジングな試みとなったのが、中国紅茶「ラプサンスーチョン」を活かすことであった。
「最初はアールグレイを試したのですが、香りが弱過ぎたのです。ラプサンスーチョンの、松の薪と葉を燃やした煙で燻製したスモーキーな独特の香りを加味したことで、はっさくホワイトの奥行きある味わいとバランスさせることができました」。
 マスカルポーネの量を通常の2倍にしてチーズ感を強調したり、濃いめのアッサムティーも使って深いコクを出したり。今回も気の遠くなるような調整を繰り返してくださった。
 合わせると、互いの味わい深さがいっそう印象的になる。感無量の一言に尽きる、至福のペアリングであった。

「trattoria e poi」シェフ・パティシエ 吉田真弓さん

いつも驚きのあるクリエイティブなドルチェを発想したいと考えています。はっさくホワイトの味わい深さが、新たな閃きをもたらしてくれたことを嬉しく思っています。クリーミーなマスカルポーネチーズを使用したティラミスの濃厚さ、アッサムのコクとラプサンスーチョンの燻製香など、このドルチェを構成する味わい一つひとつの狙いを、はっさくホワイトと合わせることで、ぜひ紐解いていただければと思います。


吉田 真弓(よしだ まゆみ)

静岡県出身。幼い頃から甘いものが好きで、夢はパティシエだった。食品科のある高校でお菓子づくりを学んだ後、辻調理師専門学校へ。そこでイタリアンの魅力を知る。卒業後は東京の数々のイタリアンの名店で修業を積む。2020 年9 月より「trattoria e poi」。シェフ兼パティシエとして活躍中

trattoria e poi ( トラットリア エ・ポイ) 
東京都品川区西五反田8-4-15 東京モリスビル第2 2F 
☎ 03-6384-6995 
営/ 11:30 ~ 14:00、18:00 ~ 22:00  休/月