新規参画インタビュー vol.20
~HORSEHEAD LABS~
現在、日本全国から250以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。その中でもひときわ輝くブルワリーの成り立ちや、DREAMBEERで新たに扱い始めたビールのご紹介をします。第20回は、静岡県静岡市の「HORSEHEAD LABS」です。
ビール造りで街おこしを目指す、HORSEHEAD LABS
東海道15番目の宿場町「蒲原宿」を拠点に、思い入れたっぷりのビール造りを続けているのが「HORSEHEAD LABS」だ。
開業は2022年。
住民の高齢化や過疎化という社会問題を抱え、元気を失いかけている蒲原を盛り上げたいと、「静岡のまちづくり企業である『スルガノホールディングス』が立ち上げたブルワリーです」と教えてくれたのは醸造責任者の高見祐輔さん。
仕込み水はブルワリーのすぐ裏手にそびえる御殿山の伏流水を使用し、ホップは自社農場で育てたものを原料の一部として使っているという。
「この地で造るからこそのクラフトビールを追求し、たくさんの方に楽しんでいただきたいと思っています」
ビールは生き物である――。
常にその前提に立ち、五感を駆使するのはもちろん、数字に基づいた醸造を行っている。
特徴的なのは、タンク内にIoTセンサーを設置していることだ。
「醸造中のデータ(麦汁の温度や比重等)をクラウドサーバーに蓄積し、タンクごとの変化を割り出して、理想の味わいを出すための最適値を導き出すことに役立てています。サーバーを介して四六時中どこにいてもタンク内の様子を把握できるので、何か対応が必要になった際の初動も早められています。ビールとしっかりと向き合いながら、よりよい味わいを生み出したいと考えています」
※IoTセンサー : アナログな情報を電気信号によりデジタル情報に変換する装置で、設備の稼働状況などをデータ化し、一元管理できる
ドイツで出合った素晴らしいビール文化
大学卒業後は化粧品を扱う大手精密化学メーカーに就職し、サプライチェーンマネジメントや工場の生産管理等に携わった。
「データサイエンティストとして、大量の蓄積データ(ビッグデータ )を分析するといったことを行っていました。その時に体得したノウハウが、現在のビール造りにも役立っています」
自分が望んだ業界で、充実した毎日を送っていた高見さんが、なぜブルワーに転身したか。
きっかけは海外赴任だった。
「ヨーロッパ、中東、アフリカの物流を統合するミッションを与えられ、駐在員として赴任した先がビール大国ドイツだったのです。それまではビールに興味を持ったことがなかったのですが、現地で知ったビールの多様性や驚くほどのおいしさに、瞬く間に虜になりました」
ハマるとのめり込むタイプだった。
手づくりビールキットを買って、ホームブリューイングをはじめるようになり、それでは飽き足らず、街の金物店でプロ仕様の道具を買い揃え、本格的なビール造りに挑戦するようになった。街のカルチャー教室や同好会にも積極的に顔を出し、醸造技術を学んだ。
ドイツ赴任から4年後、帰国の辞令が届いた。それが転機となった。
「日本ではホームブリューイングが禁止されています。けれどもビール造りを続けたいとの気持ちは抑えられず、思い切ってブルワーへの転身を決意しました」
「ベクターブルーイング(東京)」で経験を積ませて貰い、やっていけそうだと手応えを感じた頃、魅力的な縁に恵まれた。ブルワリーの立ち上げを計画していた「スルガノホールディングス」と出会ったのだ。
「全力でビール造りに取り組める機会を与えて貰えたことに感謝していますし、事業を通して街おこしに貢献するというコンセプトにも強く共感しています。ドイツで目の当たりにした『地域に深く根付き、心から愛して貰えるビール』を手掛けられるよう、奢らず、研究を怠らず、学ぶ姿勢を持ち続け、成長していきたいと思っています」
現在、DREAMBEERに提供しているのは、「HORSEHEAD LABS 蒲原エール」「HORSEHEAD LABS 蒲原ヘイジー」「HORSEHEAD LABS #15」の3銘柄。いずれも、すっきりとした飲み口と後を引く味わい深さが両立している。
「クラフトビールのことを、まだあまり知らない人にも受け入れて貰いやすい味わいづくりも心掛け、『ビールがなくてはならない生活の一部』として浸透しているドイツのような文化を静岡、そして日本で育み、広げていく一翼を担っていけたら幸せです」
高見さんが「HORSEHEAD LABS 蒲原エール」「HORSEHEAD LABS 蒲原ヘイジー」「HORSEHEAD LABS #15」と合わせたいフード
仕込み水の水質調整を一切せず、御殿山の伏流水の味わいを活かした「蒲原エール」は、ホップ投入のタイミングや温度管理を工夫し、優しい味わいのIPAに仕上げています。静岡名物の桜えびのかき揚げと合わせてみてほしいです。「蒲原ヘイジー」はヘイジーIPAとしてはアルコール度数低めの5.5%に抑え、しっかりとホップ由来のアロマを楽しめること、飲みやすいことを両立させました。生ハムやバーニャカウダと合わせてみてください。「#15」は私が20代を過ごしたドイツ・デュッセルドルフの伝統的なビール、「アルト」を再現しました。日本ではまだまだ馴染みが薄いスタイルですが、色が濃いビールにありがちな重さがなく、スッキリ飲みやすいのが特徴です。何と言ってもドイツ料理と合わせてみてほしいです。ソーセージやシュニッツェルなどの豚肉料理がイチオシです。