日本のブルワリー探訪 vol.15
~仙南シンケンファクトリー~

現在、日本全国から200以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。その中でも長きに亘り日本のクラフトビールシーンに貢献してきたブルワリーにスポットを当て、各々がビールづくりで大切にしている考え方を中心にご紹介します。第15回は、宮城県角田市の「仙南シンケンファクトリー」です。

クラフトビール造りで地元に貢献。仙南シンケンファクトリー

 宮城県の仙南地域2市7町と7つの農協が協力し、地元の活性化を目的に立ち上げたのが「仙南シンケンファクトリー」だ。
「仙南クラフトビール」の醸造を開始したのは1997年。以来、ビールの本場ドイツの伝統的な製法に重きをおきながら、心のこもったビール造りを続けている。
 現在、醸造責任者を務めている水戸美絵子さんは言う。
「代々受け継がれてきた技術を引き継ぎ、変わらぬ味をご提供できるように日々精進しています」
彼女を見守る上長の石川さんが言葉を継ぐ。
「彼女はビール造りを始めて3年目とキャリアは浅いですが、とにかく学ぶことに貪欲です。そして何事も決して途中で投げ出さない粘り強さがあります。活躍を期待しています」

醸造責任者の水戸さん。「ビールに向き合う仕事ですが、人とのつながりを大切にしています。業者の方や取引先、先輩方、お客様など、いろいろなご縁をいただけているからこそ、今の自分があります。本当に感謝しています」

ブルワーの情熱と愛情が伝わってくるビール

 水戸さんはおよそ10年間、地元で料理人をしていた経歴を持つ。
 異なる業界に興味を持ち、「仙南シンケンファクトリー」の面接を受けたところ、ちょうど醸造スタッフが退社したタイミングと重なり、経歴を買われてブルワリーに配属されることとなった。
「苦味と炭酸に対する苦手意識があり、ビールはあまり飲んで来なかったのですが、コーヒーの香りと濃厚な味わいが特徴の『仙南クラフトビール スタウト』を飲んだ時、ビールに対するイメージが大きく変わりました。こんなにもコク深いビールがあるんだと」

 自分の手でビールを造ることができる――。
 それまで想像したこともなかった状況にわくわくしたと振り返る。
 とはいえ最初は大変だった。
 ビール造りのいろはを技術指導者にゼロから学んだ。醸造以外にも出荷作業や酒税関連の書類作成など、覚えなければならない業務が山のようにあった。 
 退社してからもWEBや書籍等によって知識を早く身に付けられるよう努めた。
 自社以外のクラフトビールも口にするよう心掛け、味覚を磨いた。
 まさに、朝から晩までビール漬けの日々――。
 今も目が回るような忙しさが続いているが、水戸さんは活き活きとしていた。
「出来る作業がひとつずつ増えていくことが楽しいですし、糖化や発酵時の細かな温度管理や炭酸ガスの調整、ドライホップ(完成間近のビールに直接ホップを投入し、香りづけをする手法)の実施など、なぜここはこのようにするのだろうと次々に疑問や興味が湧き、もっともっと学びたいとの気持ちになるのです」
 ポコポコと音を立て、元気よく発酵が進んでいると、自分が生き物と接しているのだと実感し、「おいしくなってね」とビールに話しかけていることがあると笑う。
 水戸さんの情熱と愛情も、「仙南クラフトビール」の魅力のひとつになっている。

現在の生産規模は年間80kl。ゆくゆくは年間の最大可能醸造量170Klのビール造りを目指す

目下の目標は「インターナショナル・ビアカップ」入賞

 現在、DREAMBEERに提供しているのは、「ヴァイツェン」と「ササニシキIPA」。
「ヴァイツェンは私が大好きなビアスタイルです。苦味が少なく、フルーティーで飲みやすく、昔の私のようにビールに苦手意識を持っていらっしゃる方にも、ぜひ試していただきたいです」
 ササニシキIPAはホップをふんだんに使用し、柑橘系の爽やかな香りとしっかりとした苦味をバランスさせた人気銘柄。副原料に地元産のササニシキを使うことで、すっきりとした後口に仕上げている。「実家が農家をしていることもあって、地元産の農産物を使うと、よりいっそうビールに愛情が湧きます。たくさんの方に味わってみてほしいです」

 ビールイベントで、自分のビールを目の前で飲んで貰った時ほど緊張したことはない。
 そして、初めて「おいしい」と言って貰えた時の感激は、今も忘れられないと水戸さん。
 日本を代表するビールコンテスト「インターナショナル・ビアカップ」で賞を取ることが、目下の目標だという。
「歴代の醸造責任者全員が賞をいただいているので、私の代で途切れさせたくないという思いが強くあります」
 もっともっとブルワーとして成長し、必ず目標を達成したいと意気込む水戸さんから目が離せない。

「仙南シンケンファクトリー」は、ブルワリーとレストラン(営業時間/11:00~15:00(L.O.14:30)、17:00~21:00(L.O.20:30) 定休日/年末年始)が併設しており、フレッシュな「仙南クラフトビール」と、仙南地域の豚肉を使った精肉やハム・ソーセージを使用した特色ある料理を楽しめる

水戸さんが「ヴァイツェン」「ササニシキIPA」と合わせたいフード

クセがなく穏やかな味わいの「ヴァイツェン」は、肉料理でも魚料理でも合わせやすいです。仙南シンケンファクトリーのレストランでご提供しているソーセージとぜひ一緒に味わってみてほしいです。ハーブの香りと肉の旨味がヴァイツェンととてもマッチします。

爽やかな苦味、華やかな柑橘系の香りが特徴の「ササニシキIPA」は、しっかりとした味つけの料理や辛い料理と相性がよいです。個人的にはビーフシチューがおすすめです。

DREAMBEERで取り扱っている銘柄

◆ ヴァイツェン

◆ ササニシキIPA

◆ ピルスナー