いまさら聞けない!ピルスナーとIPAの相談室
〜ピルスナー編〜

ビール王国 17号より転載
文:西林達磨 イラスト:タケウチアツシ

ピルスナーもIPAもおいしいと思うけど、イマイチ本当のところがよく分からない。そこで急遽設立された「ビールの相談室」。ここに来れば、どんなビールのモヤモヤもすっきり解消。次の方、どうぞ!

ピルスナー編

Q1 ピルスナーの魅力って何?

グビグビと喉越しを楽しむならピルスナーに勝るものはない。適度な苦味とクリーンな味わいが喉の渇きを癒してくれる。その一方で、ピルスナーの繊細な味わいも見逃せない。ザーツホップの高貴なアロマや、麦芽の芳醇な味わい。いくつものピルスナーを試すと、ホップの風味が特徴的なものや飲みごたえのあるものに出合い、それぞれの個性に気付く。非常に奥が深いビアスタイルだ。初心者から上級者まで、楽しみ方を問わず幅広く受け入れてくれるのがピルスナーの魅力だ。

Q2 ピルスナーは缶や瓶から直接飲むほうが気持ちいいよね?

いくら喉越しを楽しむといっても、缶や瓶から直接グビグビはいただけない。ピルスナーの豊かな味わいが半減してしまう。何より、見た目にも美しくない。ピルスナーを満喫するなら、必ずグラスに注ごう。グラスの形状はフルートグラスのような縦に細長いものや、「うすはり」のタンブラーなど。ピルスナーのクリアな味わいを妨げないようなグラスが望ましい。また、小さすぎるグラスは喉越しを味わいにくくなり物足りないので、避けたほうが無難だ。


Q3 ピルスナーって、世界でも人気なの?

もちろん、Yesである。チェコで誕生したピルスナーは、それまでのビールとは異なる洗練された味わいと美しい見た目で、瞬く間に世界のビール地図を塗り替えた。いまでは世界のビール消費量の圧倒的多数をピルスナーが占める。個性的なビールで有名なベルギーですら、消費されているビールの約7割がピルスナーだという。100以上あるビアスタイルの中で、これほどまでにも他を凌駕している理由は、やはりピルスナーの懐の深さにあると考える。シーンを選ばず最初から最後まで楽しめるのが人気の秘密だ。

Q4 日本人がピルスナー好きなのはなぜ?

日本人とピルスナーの蜜月は、明治期に日本でビール造りがはじまったとき、ドイツ人の技師を多く招聘してピルスナースタイルのビール醸造をスタートさせたときから始まる。もし、エールを得意とするイギリス人を招聘していたなら、今頃は別のビール文化が華開いていたかも……。しかし、単に日本のビール黎明期がピルスナーだったから、100年以上経った今でもピルスナーが人気なのだ、と言えるだろうか。それよりも、ピルスナーの繊細な味わいが日本人の味覚や食文化に合うものだったと考えるのが自然ではないだろうか。ホップの苦味と焼き魚の相性については、疑う余地のないところだ。素材の味わいを邪魔することのないビールは、また、近年では温暖化の影響で非常に暑い夏となることもあり、喉を潤すにもピルスナーが最適だ。


Q5 ラガーとはどう違う?

ラガーとピルスナーの関係を喩えて言うと、日本と東京都のような関係である。つまり、ラガーのほうが大きいグループを表している。ラガーには、液色が黒いものも赤っぽいものもあるので、黄金色のピルスナーはあくまでもラガーの一部である。しかしながら、「キリンラガービール」は「ピルスナー」だと説明すると、今まで聞いた説明と違うというような気がして少し混乱してしまう。日本であまりにもラガービールが浸透しているせいだろう。「キリンラガービール」は、「ラガー」であり、さらに厳密に言うと「ピルスナー」である、と説明すれば納得。

Q6 たまに「ピルス」というビールを見るけど、あれもピルスナー?

ピルスもピルスナースタイルのビールだ。これにはちょっとしたいきさつがある。チェコで誕生したピルスナーだが、生みの親である醸造技師ヨーゼフ・グロルはドイツ人。なので、ドイツからすればピルスナーを生んだのはドイツの技術であり、ピルスナーという名称を自分たちが造るビールに名付けてもよいと思っていた。しかし、時のピルゼン(ピルスナー誕生の街)は猛抗議。結果、ピルゼン以外では正々堂々とピルスナーを名乗れなくなってしまったのだ。そこで、苦肉の策としてピルスと名乗っているというわけ。もちろん、味わいの優劣を決めるものではないので、どちらの名前でも安心してほしい。


Q7 ピルスナーの聖地とは?

チェコのピルスナー・ウルケル醸造所はその筆頭だ。ここでは、見学者だけのサービスとして木樽熟成のピルスナー・ウルケルが飲める。醸造所だけでは物足りないなら、同じくチェコの「ウ・フレク」という店はいかがだろうか。1499年創業の桁違いのブルーパブだ。伝統的製法に従ったオリジナルのボヘミアン・ピルスナーが訪れた人々を笑顔にする。

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