フラッグシップビールができるまで
vol.5~Heart&Beer日本海倶楽部~
現在、日本全国から100以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。ブルワリーの方々に、DREAMBEERで扱っているビールの開発秘話を伺います。第5回目は、「Heart&Beer日本海倶楽部」の「ピルスナー」です。
Heart&Beer日本海倶楽部
「Heart&Beer日本海倶楽部」(以下、日本海倶楽部)は、ブルワリー、レストラン、牧場などから成る石川県鳳珠郡能登町のリゾート施設だ。能登内浦の高台に面したレストランからは、能登半島の内浦へと流れる九里川尻湾の美しい風景が見渡せる。
この施設は、主に知的障害者を対象とした総合支援事業を展開する社会福祉法人佛子園が、障害を持つ施設利用者の生きがいや収入を確保することを目的として1998年に開業した。社会福祉法人によるブルワリーは日本初で、障害者の方々は主にビールのボトリングや箱詰めなどに従事している。
定番はフラッグシップの「ピルスナー」のほか、焙煎した麦の香ばしさが広がるチェコスタイルの「ダークラガー」、口当たりを軽めに仕上げた「ヴァイツェン」、天然ミネラルやビタミンを豊富に含む海洋深層水を仕込み水に使ったアンバーラガー「奥能登伝説」の4種類。また、自家栽培の島唐辛子やオリジナル焙煎の珈琲豆をピルスナーに漬け込んだ「焼肉ピルス」「珈琲焙煎ピルス」など、ユニークな限定品ビールもお目見えする。
ブルワリーの開業にあたってはビールの醸造施設をドイツから輸入し、ビール醸造のスペシャリストをチェコから招聘。これまで代々3人のチェコ人が日本海倶楽部のビールづくりに携わり、同社ビールのクオリティを磨き上げていった。
フラッグシップとしてのアイデンティティを求めて
チェコ人が代々のブルワーを務めていたことからもわかるように、日本海倶楽部のピルスナーはボヘミアンスタイルだ。ビールづくりを始めるにあたり、佛子園理事長の雄谷良成さんはイギリスやドイツなど何カ国かを視察した。その上で、日本で広く長く愛されてきたピルスナーをつくること、さらにはその発祥とされるチェコのビアスタイルを追い求めることに決めたという。
日本人にとってピルスナーはスタンダードとも言えるビアスタイルだが、一般的に飲み慣れているのはジャーマンスタイルだ。ボヘミアンスタイルはジャーマンスタイルに比べて液体の色が若干濃く、麦芽の甘味もしっかり感じる。何より、ビールではオフフレーバー(好ましくない香り)とされる「ダイアセチル」のバターを思わせる香りがある程度は許容されており、ビールの個性として認められている。
「ピルスナーのおいしさはほのかなダイアセチルがあってこそ、という考え方をチェコ人は持っている。しかし、チェコ人にとってのスタンダードなピルスナーを、必ずしもすべての日本人が受け入れられるわけではありませんでした」と、開発当時を知る営業の濱高 匡さんは振り返る。
日本人好みのピルスナーに近づけるために、醸造工程においてダイアセチルの発生を抑えることそのものは難しくない。しかし、ダイアセチルの特徴を抑えすぎてしまえば、ボヘミアンスタイルピルスナーの、ひいては日本海倶楽部ピルスナーのアイデンティティを失いかねない。
「チェコ人のブルワーたちは、ひと仕込みごとに煮沸温度を若干変えてみるなど、自分たちと日本人の味覚や感覚の違いによる調整に思い悩んだと聞いています」(濱高さん)
2019年からは、2017年から入社した魚岸翔太さんが後を引き継ぎ、醸造長を務めている。21歳の時に旅行先のチェコで出合ったボヘミアンピルスナーの美味しさに感動し、滞在中に夢中で飲みまくったことが、魚岸さんのビール好きとしての原点となった。
チェコ人ブルワーたちが築き上げてきた“日本海倶楽部スタイル”ともいうべきピルスナー。そのコンセプトも技術も受け継いだ魚岸さんは、それらをどう守り、進化させていくのか。興味はつきない。
魚岸翔太さんがピルスナーに合わせたいフード
ピルスナーは、揚げ物、鍋、中華、チーズ、燻製、スパイス…。どんな食事にも合わせやすいオールラウンドプレイヤーだと思います。私のおすすめは唐揚げと餃子です。
Heart&Beer日本海倶楽部をDREAMBEERで購入
■ Heart&Beer日本海倶楽部 ピルスナー
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/215
■ Heart&Beer日本海倶楽部 奥能登伝説
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/216