ローカルビールに会いにゆく
~黒酢の郷 桷志田(かくいだ)~

ビール王国29号から転載
取材・写真:コウゴアヤコ

火山と微生物パワーでもてなし隊

もしあなたが鹿児島に遊びに来てくれたなら、ビール好きであろうとなかろうと、きっと喜んでもらえるゴールデンコースにお連れしよう。
 まず鹿児島空港に車でお迎え。そこから40分ほどで「黒酢の郷 桷志田」に到着する。車を降りて建物を抜けると、目の前に広がる不思議な光景に歓声を上げるだろう。これぞ桷志田の“黒酢畑”である。

毎年春と秋に、黒酢杜氏らにより壷の中に水と玄米、麹が仕込まれる。商品になるまで最低3 年、長いものでは10 年以上、南国の太陽と海風にさらされながら壷の中でじっくりと発酵と熟成が進む。黒酢畑は自由に見学可。見学ツアーも開催されている


 噴煙を上げる桜島を背景に、ずらっと並んだ黒い壷、壷、壷……。その数なんと2万個だ。壷の中では黒酢が発酵熟成中。黒酢杜氏らによって仕込まれ、野生酵母を取り込みつつ、3年以上の年月をかけてじっくりと育つ。桷志田の黒酢はツンとする酸味はなく、旨味成分であるD‐アミノ酸が豊富。鹿児島の自然と微生物と人間による共同作品だ。
 そしてもうひとつの共同作品こそが、直売店の奥で造られているカクイダブルワリーのクラフトビールだ。黒酢とビールにどんな繋がりが? と意外に思うだろうが、ここのビールにおいては関係が大ありなのだ。
「ビール造りには、黒酢発酵の知恵と衛生管理技術が活かされています」と、ビール事業責任者の竹下義隆さん。黒酢の壷から採取された乳酸菌を活用した「乳酸発酵ゆずサワー」は甘酸っぱくゴクゴク飲める爽快さ。紅麹で風味付けした「アメリカンレッド」は芳醇な香りで肉料理に合う。黒酢メーカーならではのビールだ。

右から、伊集院一智さん、竹下義隆さん、新山義友さん。黒酢造りで培った発酵のプロフェッショナルたちがビール造りをしている

カクイダブルワリーでは昨年10 月にボトリング設備を導入、11 月には貯蔵タンクを造設。今後はオンラインショップでも購入できるようになる


 さて、あなたがゴクリとつばを飲み込んだところで私はマジックワードを囁く。「直営レストランで黒酢ランチと一緒にこのビールが飲めるよ」って。
 2階には、黒酢畑と海を一望できるレストラン。コーヒー以外すべての料理に黒酢を贅沢に使用している。旨味が深く、ソースをパンで拭ってビールのつまみにしたくなるほど。ビールと黒酢料理、ふたつの発酵食品の重層的な味わいにうっとりしていただこう。

ランチの一番人気は「黒豚の黒酢酢豚」。生フルーツ黒酢、前菜プレート、小鉢、サラダ、スープ、ライス又はパン、デザート、コーヒーがついて1,650 円(税込)。野菜は、黒酢もろみを肥料にして自家農園で育てられた有機野菜を使用。料理長の中村さんは京都の料亭で修業を積まれたそうで、繊細な味付けで盛り付けも美しい


 お腹を満たしたら、次は桜島ドライブだ。桜島は大正時代の大噴火で、桷志田のある大隅半島と陸続きになった。モコモコ舞う火山灰、ゴツゴツとした溶岩原、キラキラ輝く錦江湾。島が生きていることを感じられるだろう。最後は鹿児島市街地ゆきの桜島フェリーに、車ごと乗り込む。
 着岸する頃には、きっとあなたはこう言っているに違いない。

「鹿児島だーいすき!」

小規模噴火を繰り返す活火山である桜島。島と市街地を結ぶフェリーは市民の足として24 時間運航。片道大人200 円。夕暮れ時にはバラ色に染まる桜島の山肌と、明かりが灯りはじめる街を同時に眺めることができる

黒酢の郷 桷志田(かくいだ)

【住所】
鹿児島県霧島市福山町福山字大田311-2 ☎︎ 0995-55-3231

【営業時間】
9:00 ~ 17:00
ランチタイム(平日) 11:00 ~ 15:00
ランチタイム(土・日・祝) 10:30 ~ 15:00
アフタヌーンティー 14:00 ~ 17:00
※年末年始など内容や時間帯が変更になる場合があります

【アクセス】
鹿児島空港から車で約40 分
(溝辺空港IC ~国分IC ~国道220 号線)

【ホームページ】
https://kurozurestaurant.com/

桷志田ブルワリー をDREAMBEERで購入


■ 桷志田ブルワリー 乳酸発酵ゆずサワー
https://dreambeer.jp/ec/beer/detai

■ 桷志田ブルワリー 桷志田レッドエール
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/140