新規参画インタビュー vol.11
~阿波岐原クラフトブルワリー~

現在、日本全国から100以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。その中でもひときわ輝くブルワリーの成り立ちや、DREAMBEERで新たに扱い始めたビールのご紹介をします。第11回は、宮崎県高鍋町の「阿波岐原クラフトブルワリー」です。

阿波岐原クラフトブルワリー

南国宮崎が誇るフルーツをはじめとする農作物を使ったクラフトビールを幅広く展開する「阿波岐原クラフトブルワリー」。地元でガソリンスタンドを経営する寿石油有限会社社長の河野浩二さんが畑違いの事業に乗り出したのは、人口が2万人を切り過疎化が進む高鍋町で、町に新しい魅力や活気をもたらしたいという思いからだった。

産業振興や過疎対策に取り組み成果を上げている全国の自治体を視察して回り、それを参考にいくつかの事業を立ち上げる。流入人口が増えた事例に倣ったブルワリーの立ち上げもその一つ。「醸造に携わってくれる若い人が1年に1人でも増えて、こちらで家庭を持ってくれればと思いました」と河野さん。

醸造免許を取るまでの期間、これも新規事業として立ち上げた居酒屋で他社のブルワリーの銘柄を提供していたが、「こてんぱんにやられました」。宮崎といえば言わずと知れた焼酎王国。なじみの薄いクラフトビールはなかなか受け入れられなかった。

そこで自社醸造に当たってはビアスタイルを打ち出すのをやめて、日向夏(ひゅうがなつ)や生姜、ユズといった副原料の素材を前面に押し出すことで、あえてクラフトビール感を消して心理的抵抗感を下げようと考えた。2019年4月に醸造免許が下り、同年6月にオープンしたビアレストラン「OMG!TAPROOM(オーエムジータップルーム)」でクラフトビールを提供し、酔客にじわじわと浸透させていった。

「オーエムジータップルーム」が入る複合施設「blue moon(ブルームーン)」

代表銘柄は、宮崎県原産の柑橘(かんきつ)である日向夏を使った「Summer Breeze(サマーブリーズ)」。「見渡す限り全てが耕作放棄地」という場所でビール造り同様に経験のなかった農業を始め、河野さんいわく「農薬を使うノウハウがないので結果的に無農薬」で、化学肥料の代わりに麦芽粕を使って育てた日向夏の果皮と果汁を使う。フレッシュですっきりとした味わいが爽やかな南国の風を感じさせる。

もう一つドリームビアに提供する銘柄が、隣町で若手の農家がつくっている生姜を使った「Knee Deep(ニーディープ)」。みじん切り、千切り、すりおろし、加熱と、複数のパターンの処理を施し、その割合も変えながら最適なバランスを試行錯誤している。

「阿波岐原クラフトブルワリー」のヘッドブルワーとして活躍する黒木慎一郎さん

ほかにも、日向夏と同じように「この山にある分全部取っていいよ」と言われたユズを使ったり、若い農家を応援したいという思いから地域のさまざまな農作物を仕入れたりしてビールを製造。そのうわさを聞いて、数珠つなぎのように農家の持ち込み企画もどんどん増えている。

ビール造りの方向性を決める上で河野さんが大事にしているのが、その素材“っぽさ”を出すこと。その素材“本来の”味や風味を出すこととは意味合いが異なる。

「例えばライチを使ったクラフトビールだと書いてあれば、ライチの味を期待して、口の中でその味を探しますよね。その時にイメージしているのは本来のライチの味ではなく、ライチ味の清涼飲料水だったりするんですが、そこにコミットしないと出荷できない」。その味に近づけるために、工場にはさまざまなハーブやスパイスが置いてあり、「カレー屋さんみたいな状況です」と笑う。

発酵タンクは第1工場に140Lが16基、第2工場に500Lが2基並ぶ

発酵タンクは500Lが2基、140Lが16基あり、実に18種類を定番としてそろえる。地元のいろいろな農作物を使ってビールを造ることで地域活性化を、という目的は十分に果たしている。人口流入についても希望者から数件問い合わせがあるほか、アジアにも雇用活動を広げ、すでにベトナムから5人ほどの採用が決まっている。

現在、シンガポール、マレーシア、香港、中国・上海といったアジアに販路を求めて商談を進めているほか、国内でも認知度を広げようと全国各地を飛び回る河野さん。同規模のブルワリーと連携し、著名ブルワリーが集結する大規模なクラフトビールイベントとはまた異なるビールイベントの開催も見据えている。

アジアに販路を広げている「阿波岐原クラフトブルワリー」

クラフトビールの文脈からあえて一歩離れ、宮崎での壁を崩そうと打ち出した戦略のおかげで、狙い通り地元の人の抵抗感を下げることはできた。一方で、「クラフトビール感がないもんですから、逆に都内など中央ではなかなか注目してもらえない。でも、逆にそこが面白いと思ってもらえれば」と河野さん。

食後のスイーツを選ぶように、今夜飲むビールを副原料で選ぶ。そんな新しい楽しみ方が広がっていくのかもしれない。

河野浩二さんが Summer Breezeと合わせたいフード

すっきりとしたサマーブリーズは、ASEANではすし店など和食に合わせて提供いただいています。ニーディープは生姜のスパイシーさと肉料理のマッチングを追求していて、唐揚げやハンバーガー、鉄板焼きとのペアリングをご提案しています。

阿波岐原クラフトブルワリーをDREAMBEERで購入

■Summer Breeze

■Summer Breeze