日本のブルワリー探訪 vol.08
~ブルーウッドブリュワリー~

現在、日本全国から100以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。その中でも長きに亘り日本のクラフトビールシーンに貢献してきたブルワリーにスポットを当て、各々がビールづくりで大切にしている考え方を中心にご紹介します。第8回は、和歌山県有田郡の「ブルーウッドブリュワリー」です。

地元にクラフトビールの魅力を伝える、ブルーウッドブリュワリー

「曾祖父が開業した小さな酒屋を経営しており、私で4代目になるのですが、ずっと自分でビールを手掛けてみたいと考えていました」と、店主の児島章さん。
 仕事やプライベートで日本各地に足を運ぶ機会が多く、その土地その土地で造られているクラフトビールをテイスティングするようになり、多彩な味わいにハマっていったという。
「仕入れて販売することも検討しましたが、まだクラフトビール文化が根付いていない有田郡では、なかなか受け入れて貰えないに違いない。ならば自分で造ることで少しでも話題を呼び、かつ価格を抑えてクラフトビールの魅力を地元の人々に広めたい、との気持ちがありました」
 とはいえ日々の忙しさに追われ、しばらくは取り掛かるのを先延ばしにしていたと当時を振り返る。
 そんな児島さんの背中を押したのが、あるひとつの言葉だった。
 明日やろうはバカやろう――。
「ふと入った食堂のトイレの壁に、そう書かれた紙が貼ってあったのです。ハッとさせられました」
 その翌日、迷うことなく現在も師と仰いでいる「吉備土手下麦酒(岡山県)」の永原社長(現会長)に連絡を入れ、ブルワリー立ち上げの準備に取り掛かった。
 創業したのは2017年。ブルワリー名の「ブルーウッドブリュワリー」は、酒屋の屋号「青木屋から命名したとのこと。

酒屋の経営とビール造りを両立し、地元にクラフトビールの魅力を発信し続けている児島さん
2023年冬、480リットルの発酵熟成タンクを2基追加導入し、年間15KLの生産体制となった。醸造量のアップはファンにとって嬉しいニュースだ

フルーツ王国和歌山ならではのビール造りを

「吉備土手下麦酒の永原さんに相談したのは、小規模の設備で行えるビール造りを学ばせていただけるからでした」
 時間をつくっては岡山県に足を運び、ブルワーとしての知識を身に付けた。
 どんなビールを造るかも大切だが、何のためにビールを造るのか、ビール造りを通して何を為したいのか、しっかりとビジョンを持つことも大切だ。
 造り方だけにとどまらない永原さんの教えは、ブルワリーを構えて6年が経つ今も、片時も忘れたことはない。
 せっかく和歌山の有田という場所でビールを造るからには、有名な有田みかんをはじめ、地場のフルーツを積極的に使っていこうと決めていた。
「初期の頃は、ただただフルーツドーン!(とにかくたくさん投入する)みたいな感じで造っていたのですが、イベント等で様々なブルワーさんとお話をさせていただく機会を得て、現在はビアスタイルによって、フルーツの種類や使用する量をどのようにマッチさせるか――、といった観点も大切に、味わいの全体構成を考慮しながら、研究を続けています」

酒屋「青木屋」でも自分の手掛けたビールを楽しんで貰えるようサーバーを設置している。直接耳にする「おいしい」の声が何よりのモチベーション

自分の世界を広げてくれたクラフトビール

「ビール造りを始めず、今も酒屋の経営だけを仕事にしていたら、私の世界はこんなにも広がっていなかったと思います」
 何よりも喜びを感じているのは、「人との出会い」と児島さん。
 イベントや勉強会等でたくさんのブルワーと交流することが楽しく、「もっと頑張ろう」とモチベーションが上がる。
「おいしい」とファンが笑顔を見せてくれた時の嬉しさは何物にも代えがたい。
「時には片言の英語で外国人のブルワーさんやお客様とコミュニケーションを図ることもあります。昔の自分だったら想像すらしなかったこと。めちゃくちゃ面白いです(笑)」
 農家をしている地元の友人たちも栽培した農作物を持参し、「ビール造りに活かせないか」と積極的に声を掛けてくれる。
 どんどんどんどん、つながりが広がっていく。
 最近最も刺激を受けているのは、時期は違うが同じ吉備土手下麦酒でビール造りを学んだ「Milestone Brewing 東加古川醸造所(兵庫県)」の大西誠さんからという。
「元臨床工学技士(医療機器の専門医療職)で、60歳からブルワーになられた方なのですが、凄くパワフルで中身がアメリカ人なのではないかと思うほど、おいしいIPAを造られるのです。大西さんから教えを受けられたおかげで、ホップをはじめとした原料への理解が深まり、醸造技術のアップデートにもつながりました。とても感謝しています」

長くビール造りを続けていきたい

 現在DREAMBEERに提供している「ブルーウッドブリュワリー セッションIPA」は、まさに研鑽を積む児島さんの絶妙なホップ使いを堪能できる人気銘柄。そして、「ブルーウッドブリュワリー 有田山椒エール」は地場の山椒を使い、食中酒としての料理とのマッチングを追求した自信作。
 いずれも味わいのバランスがよく、ドリンカブルな仕上がりだ。
 2023年の冬に、新しい発酵熟成タンクを2基増やした。
 とはいえ、今後さらに醸造量を増やしていこうという考えは今のところない。
 児島さんの目下の目標は、「長くビール造りを続けていくこと」。
あくまでも品質を重視し、しっかりと地元に根を張り、地域に貢献していくことを大切にしたいと意欲を燃やしている。

地元の食材を積極的に使いながら(写真は地元で採れる山椒 
※年間通して使用できるよう冷凍保存している)、醸造技術をもっともっと磨いていきたいと児島さん

児島さんが「ブルーウッドブリュワリー セッションIPA」「ブルーウッドブリュワリー 有田山椒エール」と合わせたいフード

地元のはっさくのピールと柑橘系ホップを使用し、何杯でも飲めるようライトな飲み口に仕上げている 「セッションIPA」は、ビーフシチューなど濃い目の肉料理を合わせるのがおすすめです。
生産量日本一の地元有田川町の山椒を使ったスパイスエール「有田山椒エール」は、山椒が出しゃばり過ぎず、食事とマッチするよう何度も試行錯誤しながら完成させました。鰻料理や焼鳥と合わせてみてください。

DREAMBEERで購入

◆ セッションIPA

◆ 有田山椒エール