フラッグシップビールができるまで vol.8
~みちのく福島路ビール~

現在、日本全国から100以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。ブルワリーの方々に、DREAMBEERで扱っているビールの開発秘話を伺います。第8回目は、「みちのく福島路ビール」の「桃のラガー」です。

みちのく福島路ビール

「みちのく福島路ビール」(以下、福島路ビール)は、福島県北部・福島市の郊外にあるブルワリーだ。吾妻連峰の山麓に位置する県内有数の観光スポット「アンナガーデン」の一角で、家族経営の有限会社福島路ビールが運営するブルワリーとして1997年に産声を上げた。

福島路ビールの定番は8種類。基本は「ピルスナー」「ヴァイツェン」「デュンケル」などのように、ドイツスタイルがベースにある。その上で、福島県産米の「ひとめぼれ」と同県のオリジナル清酒酵母「うつくしま夢酵母」を使った「米麦酒(マイビール)」のように、地域に根づいたビールづくりを行っている。

「みちのく福島路ビール」は、生産の4割をピルスナーが占める。醸造所には、1kℓの仕込み釜に加え、1kℓのタンクを15本、同2kℓを6本、300ℓを2本備えている。

地元産の作物を使ったビールの中で同ブルワリーの代名詞的存在になっているのが、副原料として福島産の白桃「あかつき」を30%使った「桃のラガー」だ。グラスに注いでいる時から桃の香りがふわっと広がり、口に含めばラガーらしく甘味がスッと切れる。

「桃のラガーをつくりはじめたのが2012年からですから、今年で11年目になりました」と、醸造責任者を務める吉田真二さん。創業から15年後に誕生したことになるが、いまやピルスナー、ヴァイツェンに並ぶほどの看板商品に成長している。

「アンナガーデン」内にある福島路ビールの直営店「PROST」では、同社の樽生ビールが6種類のほか、骨付きソーセージやエスカルゴ、チーズやナッツなどのスナックが楽しめる。

桃の特徴を甘味でなく香りで感じさせたい

桃のラガーは、麦汁にビール酵母を添加して主発酵が終わったところに搾汁・冷凍した桃を入れて二次発酵させることで、桃の香りを高く保ったまま上品でスッキリした甘さを実現している。この「桃を入れて発酵させる」工程が加わることで醸造期間は他のビールよりも長くなり、完成までには2ヶ月ほどかかるという。多くのエールビールが仕込みからできあがるまで約1ヶ月であることを考えると、実に2倍の時間をかけていることになる。

これは、「桃をはっきり感じてもらえる香りを出すこと」を吉田さんが何よりも大切にしているからにほかならない。さらに、「甘ったるくもったりした印象にならないよう、キリッとした飲み口のラガーにしたかった」と吉田さんは語る。

醸造を始めたきっかけは、東日本大震災復興を目的とした音楽イベントで、桃のラガーに使っている桃を生産している「伊達農園」と知り合ったことだった。「震災にともなう風評被害で、桃をはじめとする農作物がまったく売れず、ほとほと困り果てていらした。福島県はフルーツ王国で、桃は山梨県に次いで2番目の生産量を誇ります。伊達農園さんはもちろんのこと、福島のためにも貢献したいと考えました」(吉田さん)

みちのく福島路ビールの醸造責任者を務める吉田真二さん。もともとはホテル勤務だったが、ビールの魅力に取りつかれこの道に。2009年からビール醸造に携わっている。

当時、吉田さんにとってフルーツを使ったビールは未知の領域だった。周りにフルーツビールをつくっているブルワリーの知り合いもいない。そもそも、ビール全体に対する桃の分量がまったく検討つかず、まずは仕込みのたびに量を調整することから始まった。

「最初は自社で搾汁機を購入して自分たちで桃を絞っていたのですが、どうも思ったようには香りが出ません。ホップの香りを出すドライホッピングの製法を参考にして熟成段階で果汁を入れてみましたが、意図せぬ発酵が起きてしまい、樽を販売した先のビアバーから『泡しか出てこないよ』と苦情が入ったこともありました」(吉田さん)

農作物である桃は、年によって糖度の高さなどにばらつきがあったりする。吉田さんが理想とする桃のラガーに向かって、酵母や麦芽を最適なものに変えたり、果汁の量を変えたりといった試みが長く続いた。

その中で品質の安定につながったのは、桃の搾汁を専門業者にお願いしたことだ。より桃の香りが際立つ搾汁が実現でき、さらに果汁を冷凍することで通年商品にもできる。果汁の成分分析を通してより精密な品質管理ができるようにもなった。

「うちのブルワリーは、始まりとなったドイツスタイル、特にピルスナーづくりの基本をしっかり守るのが身上。酵母は生き物なのですべてをコントロールはしきれませんが、水質や味の管理は毎日毎日しっかりしています」(吉田さん)

味のブレがなく、常に同じ品質で提供することが大切だ、と吉田さんは重ねて言う。果物を使ったビールでそれを実現するのは至難の技。しかし、それを成し遂げているからこそ桃のラガーは多くの人に愛され続けているのだ。

吉田真二さんが桃のラガーに合わせたいフード

スッキリした飲み口なので、ビールの酸味を感じてもらいながら肉料理に合わせてみてほしいですね。桃と同じストーンフルーツ系や、ベリー系などのフルーツタルトとの相性も抜群です。

みちのく福島路ビールをDREAMBEERで購入

■ みちのく福島路ビール 桃のラガー
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/108

■ みちのく福島路ビール 米麦酒
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/109

■ みちのく福島路ビール AMERICAN IPA
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/237