フラッグシップビールができるまで vol.10
~大山Gビール~

現在、日本全国から100以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。ブルワリーの方々に、DREAMBEERで扱っているビールの開発秘話を伺います。第10回目は、大山Gビールの「ヴァイツェン」です。

大山Gビール

「大山Gビール」は、鳥取県西伯郡伯耆町にある「くめざくら大山ブルワリー」のビールブランドだ。創業160年以上の歴史を持つ地酒メーカー「久米桜酒造」が、1994年の酒税法規制緩和をきっかけに1997年よりビール醸造を開始。併設のブルワリーレストラン「ビア ホフ ガンバリウス」では、できたてのビールとともに地元の食材を使った料理を楽しめる。

「伯耆富士」とも呼ばれる大山(だいせん)の麓、標高300mの土地に醸造所を構える。併設のブルワリーレストランで大山の食とともにビールを味わいたい

くめざくら大山ブルワリーの近くには「平成の名水百選」にも認定された「地蔵滝の泉」があり、ブルワリー地下150mから汲み上げた極めて良質な伏流水がビールづくりの原料として使われている。

「大山の伏流水は超軟水。基本的に定番ビールに使う際には水質調整をしません。この水こそが、ビールをクリーンで優しい味わいに仕上げてくれる。大山Gビールの半分は優しさでできています」と、同ブルワリーの醸造責任者である岩田秀樹さんは笑う。

定番ビールは、「ピルスナー」、「ペールエール」、「ヴァイツェン」、「スタウト」の4種類。ほかにも、地元農家とともに育てた大山産大麦を使って仕込む「大山ゴールド」、地元の人や大山Gビールのファンたちと栽培・収穫した酒米「山田錦」を麦芽にブレンドした「八郷」、農薬を使わずに栽培したとれたてのホップを使って仕込む「ヴァイエンホップ」など、大山の四季や土地の恵みを感じてもらうことをコンセプトとした季節限定品をつくり続けている。

大山Gビールの醸造施設。仕込釜は2klと1kl、発酵タンクは2klを11本、4klが3本、1klを1本備える

「ヴァイツェンは “つくり続けてナンボ” 」

「大山Gビール」の代名詞的存在とも言えるのが「ヴァイツェン」だ。グラスに注ぐとバナナを思わせる甘い香りが匂いたち、白くきめ細やかな泡が盛り上がる。口に含むとホップの苦味はほとんど感じず、ほどよい甘味と酸味がなめらかに広がっていく。2011年には世界的なビールコンペティション「World Beer Awards」のヴァイツェン部門で世界一を受賞した。

大山Gビールのヴァイツェンが生まれたのは、ブルワリーの創業時であり岩田さんが入社してビールづくりを学び始めた1997年だ。

「おおよそのレシピは、醸造研修に行った大手ビール会社の方が考えてくれました。最初に飲んだ印象はぼんやりとしか覚えていませんが、よくできているなと。当時はビールをつくるのも飲むのも経験が浅くて、これが“正しい”のかは正直わかっていなかったのですが」(岩田さん)。

岩田さんが理想とするヴァイツェンは、「液体の色は白くて口当たりが柔らかく、優しい味わい」。「白」は大山の麓にある牧場でとれる牛乳の白さを、「柔らかい、優しい」は大山の伏流水の軟水を想起させる。まさに「土地そのもの」も表現するビールだ。

同じヴァイツェンでも、ブルワリーごとに方向性や仕上がりが異なる。たとえばビールの色ひとつとっても、白いものもあれば褐色よりのものもある。岩田さんが “自分たちなりのヴァイツェン”をつくり始めてからしばらくして、ドイツ・ミュンヘンの「ヴァイエンシュテファン醸造所」へヴァイツェンを飲みに出向いた。「白に近い液体の色、ボディ感、甘味と酸味のバランス。現存する世界最古の醸造所がつくるヴァイツェンと、自分がつくってきたヴァイツェンの方向性に共通点を感じた時、自分たちがイメージするヴァイツェン像の軸がより定まったように思えた」という。

では、25年以上つくり続ける中、現在の味わいをつくるためにさぞかし何度もレシピを変えたのだろう──と思いきや、実際はまったくの逆だった。大きく変更したのは2回。ヴァイツェンをつくり始めてから10年経過した「自分たちのヴァイツェンを追求しよう」と考えたタイミング、そして醸造施設や醸造量を変えた時だけだ。

麦芽はドイツ産とイギリス産、ホップはニュージーランドの「モトゥエカ」とドイツの「ノーザンブルワー」。現在、酵母は醸造時に使ったものを繰り返し使用している。水はもちろんのこと、麦芽もホップも銘柄は変えていない。

「うちのヴァイツェンはある程度のところまで完成されている満足感はありますし、長い時間をかけて安定した味わいをつくれる技術も磨き上げられました」と岩田さんは自身を覗かせる。それでも、毎回仕込むごとに完璧に同じものができるとは限らないビールづくりには、未だに奥深さを感じているという。

もちろん毎回合格点を出せるものはできているが、その中でひときわビビッと「今回はパーフェクトだ」と感じる出来になることがある。それは、小麦のたんぱく質由来の滑らかさだったり、酵母が醸すバナナのようなエステル香とクローブのようなフェノール香のバランスが狙った通りになっていたり。

つまり、素材ひとつひとつやその組み合わせが、岩田さんの考える「パーフェクトな大山Gビールのヴァイツェン」になるパーツを持ち合わせているということだ。「あとは私たちが、それらのパーツがうまくハマるよう腕を磨いて、パーフェクトの連発を目指すだけですよ。ヴァイツェンは“つくり続けてナンボ”です」(岩田さん)

クラフトビール業界は日進月歩。新しい醸造手法や原材料に関する情報が飛び交い、試すことがたやすいぶんだけ軸がブレやすくもなる。「自分たちが理想とするヴァイツェン」を長年かけて考え、確認し、腕を磨き続けてきたその姿勢には、「大山Gビールのヴァイツェンを飲んでクラフトビールにハマった」というファンが多く存在するのも大いに頷ける。

大学で微生物の研究に携わった後、卒業後の1997年よりビールづくりを始めた岩田秀樹さん。現在2つの音楽バンドに所属しており、ビールづくりと音楽は岩田さんにとっての二本柱だ。「ともに自分が楽しんでなければ伝わらない点が、醸造と音楽の共通点です」(岩田さん)

岩田秀樹さんがヴァイツェンに合わせたいフード

ドイツの白ソーセージ「ヴァイスヴルスト」は鉄板です。鳥取の食では、大山地鶏をシンプルに香草と塩で焼いたものと召し上がってください。

大山GビールをDREAMBEERで購入

■ 大山Gビール ヴァイツェン
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/197

■ 大山Gビール ペールエール
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/198

■ 大山Gビール ピルスナー
https://dreambeer.jp/ec/beer/detail/247