日本のブルワリー探訪 vol.04
~MIYAJIMA BREWERY~

現在、日本全国から100以上の銘柄を皆様にお届けしているDREAMBEER。その中でも長きに渡り日本のクラフトビールシーンに貢献してきたブルワリーにスポットを当て、各々がビールづくりで大切にしている考え方を中心にご紹介します。第4回目は、広島県廿日市宮島の「MIYAJIMA BREWERY」です。

宮島島内唯一の醸造所、MIYAJIMA BREWERY

海に浮かぶ厳島神社の赤い大鳥居で有名な世界遺産「宮島」に、気鋭のブルワリーが存在することをご存じだろうか。
宮島の老舗旅館(現在は閉業)の20代目であるCEOの有本樹生さんが、地元の活性化につながるようにと「MIYAJIMA BREWERY」を起業したのは2010年。当初は委託醸造のみだったが、2018年からは念願の自家醸造をスタートさせた。天然記念物に指定されている弥山原始林の伏流水を仕込み水に使い、色や味わい、副原料等によって、宮島や広島の魅力を感じて貰えるビール造りを続けている。

地元出身のブルワーによる思い入れたっぷりのビール

「ブルワリーを観光地のど真ん中に構えているため、タップルームには『クラフトビールをほとんど飲んだことがない』というお客様も多くいらっしゃいます。そのような方々に抵抗なく好きになって貰える飲みやすさ、好きな方々にとっても物足りなさのない奥行きのある味わいづくりを心掛けています」と製造部長の森川達也さんだ。
 生まれ育った大好きな地元を盛り上げたいとの気持ちが強くあるという。
 仕込みごとに全ての行程のデータを丁寧に取り、分析を怠らず、味わいのアップデートに余念がない。まだまだ、まだまだと謙虚な姿勢を崩さず、ひとりでも多くの人にクラフトビールの魅力を伝え、何度も宮島に足を運んでほしいと意欲を見せる。
「この1年は特に、リリースしている全銘柄それぞれの特徴や味わいの輪郭をはっきりさせるため、原料の見直しやレシピの変更、水質の調整などに力を入れています」
 DREAMBEERへ提供する人気銘柄「広島レッドエール」と「宮島ヴァイツェン」は色の美しさや味わい深さ、料理と合わせた時のバランスをテーマに試行錯誤を重ねたという。
「おいしいと喜んで貰えたら、それほど嬉しいことはありません」

製造部長の森川達也さん。クラフトビール造りによって宮島や広島の魅力を広く発信したいと意欲を燃やす
テイスティングに集中する森川さん。味わいと品質のアップデートに余念がない

ビール王国チェコで受けた衝撃

森川さんは学生時代から、機会をつくっては海外を旅している。
目にしたことのない景色や触れたことのない文化、自分の知らない世界にとても惹かれるのだ。「本やテレビやインターネット等を通してではなく、直接現地に足を運び、自分の五感全てで体感することが好きです」
古城の修復というボランティアで、チェコに3週間ほど滞在したのは学生の時。
チェコといえば日本人にとって最も馴染みの深いビアスタイル、ピルスナーの発祥国だ。
そこで衝撃を受けた。
ピルスナースタイルの本家本元にして原型である「ピルスナーウルケル」を口にしたのだ。
元々ビールは好きだったが、おいしさの次元が違った。
「驚いたことに用意された宿舎には常時ピルスナーウルケルがつながっており、いつでも安価に飲めるという環境だったのです(笑)。ボランティアを終える頃にはピルゼンにある本社の工場に見学に出掛けたほどすっかりファンになっていました」
卒業後はビールとは関係のない一般企業に就職したが、チェコでの素晴らしい体験は、いつまでも心から消えることがなかった。
5年ほど勤めて職を辞し、再び丸一年世界中を気の向くままに放浪した。
旅の終わりが近づいた頃、将来について真剣に考えた。
日本で最も帰りたい場所はと自分に問うと、生まれ育った広島だった。
ならばそこでビール造りの仕事に就けないか、地元に醸造所はないかと検索した。
どうか働かせて欲しいとインドから連絡を入れたのは2017年。
「MIYAJIMA BREWERY」がまさに自家醸造を実現しようと動き始めたタイミングだった。

クラフトビールの魅力にどんどん魅せられていく

ビール造りはどこか、自分が夢中になった旅に似ている。
好奇心をくすぐられ、まだ見ぬ知らない世界を開いていく感覚がある。
ビールには人の心を魅了し、忘れられなくさせる力がある。これは実体験だ。
ブルワーとしての仕事に心底やりがいを感じていると森川さん。
「ビールは苦手だったけれど、宮島ビールなら飲めると言ってくださるお客様や、ご家族の記念日に毎年宮島ビールをご購入くださるお客様、毎月必ずタップルームに足を運んでくださるお客様をはじめ、応援してくださる方々の存在に、大きなモチベーションをいただいています」
今後もさらに品質や味わいの追求を続け、世界遺産の観光だけではなく、クラフトビールを目的に、たくさんの人に宮島を訪ねて貰えるようブルワリーを成長させるのが目標だ。

衛生管理を徹底しているブルワリー
併設のタップルームで直接客の声を聞けることが、大きなモチベーションにつながっている

森川さんが「広島レッドエール」「宮島ヴァイツェン」と合わせたいフード

広島や宮島をイメージした(厳島神社の鳥居や広島東洋カープのチームカラー、紅葉など)、赤い色が特徴的な「広島レッドエール」はベリーや柑橘の香りとしっかりとしたコクが魅力。ぜひ広島名物のお好み焼きと合わせてみてください。
宮島ヴァイツェンは、刺身などの魚介との相性がよいです。宮島ブルワリー近隣では「大野あさり」や「宮島ムール貝」が採れ、また瀬戸内海では広島県民がこよなく愛する「こいわし(カタクチイワシ)」も採れます。大野あさりと宮島ムール貝の酒蒸し(ヴァィツェン蒸しもおすすめ)やこいわしの刺身などを合わせて飲むのがとてもおすすめです。

DREAMBEERで購入

◆ 広島レッドエール

◆ 宮島ヴァイツェン