全国ビアパブ&タップルーム巡り
Y.Y.G. FACTORY

ビール王国39号より転載

自由度の高さに惹かれ提供側から造り手へ

東京駅から電車で約50分。JR外房線の本千葉駅から徒歩1分の好立地に「Y.Y.G. FACTORY」はある。釀造責任者を務める中村 遼さんは、フレンチのグランメゾンなどでソムリエとして長きに渡り経験を積んだ後にビール醸造の道へ飛び込んだという、ビール業界では珍しい経歴の方だ。

普段はY.Y.G.ファクトリーで仕込みや店舗の切り盛りを行う、醸造責任者の中村 遼さん

尖りすぎない個性のビールを

「Y.Y.G. FACTORY」を運営するY.Y.G.BREWING COMPANY は、所在地である東京・代々木の地名からその名をとった会社だ。
 その代々木に2016年4月、ブリューパブ「Y.Y.G. brewery&Beer Kitchen(以下、Y・Y・G・ブルワリー)」を開店。同社のビール人気の高まりに応え、2019年5月には700ℓの醸造施設を導入した2号店「Y.Y.G. FACTORY(以下、Y・Y・G・ファクトリー)」を千葉県千葉市にオープンした。Y・Y・G・ファクトリーのドアを開けるとまず目に入るのはJ字形のカウンター、そして左手にずらりと並ぶタップハンドル。用意しているビールは9種類だ。
 定番は、「新宿ペールエール」、「代々木アンバーエール」、「渋谷IPA」。ほかにもサワーやケルシュ、メルツェンなどの様々なビアスタイルや、地域野菜や果物などの食材を使って醸造した『千葉の地産地消プロジェクト』ビール、他ブルワリーとのコラボビールも提供する。「Y・Y・G・ファクトリーには現在も多くのクラフトビール入門者が来訪されます。どんな方にも受け入れてもらえるよう、個性を尖らせすぎない優しいビール、というテーマは、Y・Y・G・ブルワリー設立当初から変わりません」と、醸造責任者を務める中村 遼さんは語る。
 中村さんが同社に入社したのは2018年1月だ。もともとは料理の専門学校を卒業後、銀座のグランメゾン「タテルヨシノ」(現在は閉店)でソムリエに従事。フランスに渡り修行した後、再度銀座の「ロオジエ」、そして外苑前のモダンフレンチ「フロリレージュ」といった一流店のソムリエとして、トータルで10年以上の長きに渡り、ワインを中心としたシーンで活躍してきた。

Y.Y.G. ファクトリーは本千葉駅から徒歩1分の場所にある
Y.Y.G.ファクトリーの醸造施設は、700ℓの仕込釜と同容量の発酵/熟成タンクが8基

ビールの自由な気質に惹かれて

 中村さんが考えるビールの魅力は「自由な気質があるところ」だ。「ワインづくりは1年に1回だけですが、ビールは仕込み回数が多く、原材料の組み合わせが無限大である点に惹かれました」(中村さん)。
 ビールに目が向くようになったのは、フロリレージュでのソムリエ経験だった。同店で提供する料理にペアリングするドリンクは、ワインに縛られてはいなかった。ビールや日本酒、カクテル、ノンアルコールなどかなり幅広い範囲の知識と、提供直前まで決まらないメニューへの対応かつ瞬発力が求められたのだ。
「ワイン以外のお酒に触れペアリングをし続けた経験は大きかった」と中村さんは当時を振り返る。料理のように、味わいの“組み合わせ”を自分の手でも実現したいという気持ちが、原材料の組み合わせや醸造方法によって異なる顔になるビールへの想いを募らせていったという。
 そんな中、Y・Y・G・ブルワリーが家の近所にオープン。ビールに惚れ込み、当時醸造長を務めていた山之内圭太さん(現『DD4DBREWING』代表)に頼み込んでビール造りの道に飛び込んだ。
 ビールも好きだが、食事の“場”そのものが好きなのだ、と中村さんは言う。「嬉しい驚きや喜びを飲み手に感じてもらい、場を明るくするようなビールを造り続けていきたいですね」。

店内では9種類のタップビールを提供。中村さんのお気に入りは「代々木アンバーエール」

「代々木アンバーエール」は、中村さんが仕事終わりに1番飲みたくなるビールだ。実は他のスタッフも同じように感じており、一番人気なのだとか。

フードはソーセージや前菜の盛り合わせ、自家製ビーフジャーキーなどの軽食を用意する

Y.Y.G. FACTORY

千葉県千葉市中央区長洲1-23-4 1F
☎ 043-306-2556
営/火〜金 17:00-23:00 土 14:00-23:00
休/日・月
http://www.yygbrewery.com/factory